第32話
しばらく談笑してから、また奥の階段へと向かう彼女。
ハイエナたちは無惨にも散った。畜生という舌打ちが聞こえてきそうなほどに。ざまあみろ。
そら学生じゃ相手にならないだろうし、31歳からしたら大学生なんて5歳児と同じ。
ねえ梨添さん。梨添りいほ31歳さん。
じゃあ、俺はどうなんですか。幼稚園で先生に群がる5歳児の一人ですか。
何で俺は、梨添さんにピアノの先生を指名されたの?
ピアノが上手いから?
俺の指がよく動いて気持ち悪いから?きもかわいいってやつ?欲を言えばかわいいだけがいいです。
彼女は軽くみえても、常識的なお堅い女性だ。
動物園にいる雌猿でも、柏木さんのように外壁工事に時間を費やす女でもない。ちゃんと敬称をつけたくなるような女性。
ちなみに彼女を100文字以内にまとめるとこんな感じ。
『梨添りいほさんは無理して自分を作ろうとしている姿が魅力的です。
元ある印象よりも、わざと下げようとしている姿に大変興味が沸きます。
その内壁を掘り下げてずぶずぶと押し入りたいと思う俺は変態でしょうか?』
上手な大人ならこう返してくるだろう。
『私に興味を抱いていただきありがとうございます。下ネタでも変態でも嬉しいです。
お礼にゴディバのトリュフを差し上げます。では失礼します。』
褒められたからまずお礼を言う。下ネタと変態を否定しない。形の残らない高級なチョコを渡す。全て敬語で壁を作る。以上。
後腐れなく、相手に未練を残すこともない大人の振り方。
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