第28話

「俺、東乙菱堕とすからさ、お前矛兎百奈いけって。」


「………ふざけろ。」


「なんかあの二人って、俺等と同じ匂いしない?


「はあ?」


「絶対本気で堕ちなさそうじゃん?」    

   


噂ではよく耳にする。矛兎百奈は3年から編入してきた癖に、もうサークルクラッシャーの偉業を成し遂げてるって。



散々男を弄んで女の子から嫉妬を買って、それで二人で孤立してるってやつ。俺らとおんなじ?いんや、俺は違うって。弄んでるわけじゃなく、勝手に向こうから寄ってくるんだもん。



「それなら俺が矛兎百奈を弄んでやればいいって?」


「そうそう。」


「んで、于羽が東さんを堕としにかかると。」


「んだんだ。」


「……悪くないね。」


「めっずらしい〜!鹿助が俺の提案に乗ってくれるなんてさあ。」



于羽の暇つぶしがいつもろくでもないんだって。誰が楽しくて真冬のゲレンデをクラッシャーしにいく?クラブだって昔出禁になったってのに。



「矛兎百奈のが手強そう。ああ見えて才女じゃん。」 



3年から編入してきて?で、もう秋の学会で奨励賞?



ふざけんなって。男を誑かすことに生きがい感じてる女が何調子こいてんの。インテリでもねえ癖にぶってんじゃねえよ。



窓から風が、ちんけなカーテンを揺らして、外から『百奈ちゃーん。飲みいこー。』と叫ぶ下衆い声が聞こえてくる。 



「嫌いな女堕とすとか、めんど。」



でも俺にぶった切られる矛兎百奈を見るのは悪くないよね。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る