第20話
面接当日の順番で予定していた2人は急遽、コロナに罹患して来られなくなった。
(名簿を公開)
飯尾一樹 22歳 独身 正社員希望
前沢友作 60歳 既婚 前職が和菓子職人 パート
美浦翔平 26歳 独身 前職 調理師 正社員希望
美浦孝子 26歳 独身 前職 パティシエール 正社員希望
江口陽介 25歳 独身 前職 配送員 正社員希望
大羽久巳子 58歳 既婚 専業主婦 パート
石島美咲 42歳 既婚 前職 某メーカー販売員 パート
鈴木宗生 26歳 既婚 前職 大工 正社員希望
浜辺美知恵 21歳 独身 前職 紳士服売り場販売員 正社員希望
土田恵梨香 23歳 独身 前職 保育士 児発管 正社員希望
飯尾一樹 22歳 独身、その日、家出の途中だった、彼は広島県廿日市市宮島町の広電宮島線の宮島駅の近くに住んでいた。ここは日本三景・安芸の宮島厳島として有名で、特に厳島神社は神殿を始め数多くの国宝・重要文化財をもち、一九九六年(平成八年)にはユネスコの世界文化遺産にも登録された、厳島に渡るフェリーの乗り場がある。
広島駅から大阪に行くはずだったが飯尾は、『原爆ドーム前駅』の、深い霧に包まれた不思議な駅に着いてしまい下車した。戸惑う彼は、一回、駅のベンチに座ってスマホで、いつも見ている麗奈のSNSを見た。
『和菓子店 桔平 パート募集』があり、麗奈に会えるのではと思い募集要項を読んだ。
住所、広島県広島市中区紙屋町西二丁目四番二十四号、採用条件、徒歩で通勤できる人、履歴書、職務経歴書持参、面接時間、相談、とりあえず、飯尾はパートをすれば、あの有名で可愛くて美人の麗奈に会えるのではと思い、パートをすることにして、ショートメールを麗奈に送ると、すぐに返信が来て、翌日の一番の午前中の八時に面接が決まり採用となった。
面接の際に麗奈に会えた飯尾は、それだけで嬉しかった。将来的には正社員希望だった。
※
前沢友作 60歳 既婚、次に面接をして採用決定したのは、前職が和菓子職人だった、
彼は獅子屋の本店で修業し、一時期、東京の虎屋で再度、修行して獅子屋の寅之助に戻されて、その後は定年間際まで勤務していたが、寅之助からもっと原価を下げろと言われ、若い工場長とも意見が合わなくなったことで、55歳で退職して、その後、広島駅近くの鶴屋で和菓子職人として勤務していて60歳の定年を迎えた。
他の店でのパートで就職がしたいと思っていた、孫娘が麗奈のSNSを見て応募したとのことだった、心平は今回の募集で和菓子職人経験者が応募してくれるなどとは思っていなかったので嬉しかった。
そして「時給は一時間、千五百円を提示させて頂きます、一日五時間でいかがじゃろうか?」と言うと友作が言った。「社長さんの、そのお気遣いには感謝いたします、しかし、うちゃ病気もしとり、体力的にも現役たぁ違うけぇ、他の人と同じ時給で結構でがんす、でも技術は持っとるけぇ、後進に伝授できるものならしていきたい思うとるが、如何じゃろうか?」
心平はその言葉にはありがたく受けることにした。そして席を立ち帽子を取り、丁寧に頭を下げて礼をした。「そのお気持ちに心から感謝いたします。今後ともどうぞ宜しゅうお願い致します」
※
美浦翔平 26歳 独身 元調理師と美浦孝子 26歳 独身 元パティシエール。彼らは双子で高校を卒業後、弟の翔平は調理師学校を卒業し、姉の孝子は製菓学校を卒業してシェルトングランデホテル広島に入社したが二人でワゴン車の中古を買って日本一周旅行を計画して四年前に退職したが、コロナが流行してしまい、計画が
それぞれ様々なバイト先に就職して生活していたが今回、麗奈のSNSを見て
二人は
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