第19話

心平は獅子屋に対して宣戦布告をしたつもりは全くないが、獅子屋の社長である寅之助は自分の言うことを素直に聞かない人間に対しては絶対に許さないという性格だった事で、彼は心平を目の敵にするようになった。


翌日、麗奈がパートの募集をして直ぐに地元に住んでいる男女が面接に来た、三十分毎に面接をして20歳~60歳までの10人を採用した。当初は12人の予定だったが2人は来なかった。


二十代の彼らは就活に失敗した人たちで前沢は定年退職をした元和菓子職人で石島と大羽は主婦だった、


そして一日午前と午後の四時間労働の週休二日制にして、将来的に正社員希望のパートには一日、3時から10時と10時から17時の7時間労働で一時間休憩、早番、遅番交代制にして週休二日にすると、20歳代の男女が全員希望した。


前沢友作  60歳 既婚(前職が和菓子職人)

江口陽介  25歳 独身

飯尾一樹  22歳 独身

鈴木宗生  26歳 既婚

美浦翔平  26歳 独身

大羽久巳子 58歳 既婚

浜辺美知恵 21歳 独身

土田恵梨香 23歳 独身

美浦孝子  26歳 独身

石島美咲  42歳 既婚


面接後には一旦、帰宅してもらって、心平と麗奈だけで仕事をした、そして麗奈をマネージャー職にした麗奈が宣言した。「大学を卒業したら桔平を株式会社に法人化して正社員で就職をしたいです、必ずそうして見せます!」

心平はそのことを宣言し、有言実行を目指す麗奈を頼もしく思っていた、


  ※


和菓子店 桔平では添加物を入れる事は絶対にしないので、腐敗が一番怖かった。飲食業界の基本中の基本だが注意しておかなくてはいけない備忘録として。


家庭でも使える事だったので、麗奈に頼んでパソコンでA四紙に書いてもらいコピーしパートに渡し周知させた。


夏場に腐りやすい原因とは?

和菓子が腐り易いのは菌が増えて具を傷めてしまう為だ、吐いたり、下痢になったりの症状が出るほどの菌と菌が出す毒素が増えることで食中毒になる。菌が増える主な原因は、湿度(水分)と温度だ、多くの菌は水分を好み湿度が高い梅雨時期が腐り易い条件が満たされる。


多くの菌の好みの温度は35℃前後で、10℃以下でもゆっくりではあるものの繁殖する。夏場の温度は3から40℃になる事が多い為、腐り易い条件が満たされる。ただし黄色ブドウ球菌は5℃~47.8℃と増える温度の幅が広いので要注意だ。


この黄色ブドウ球菌は加熱殺菌が効かないので付けない事が大切で腐らせない菓子を作る時にポイントとしては! 菌を付けない菌を増やさない事、これに菌を殺す事を追加し、腐らせない饅頭を作る時の条件となる。


寅之助の会社の獅子屋が結婚式場の引き出物で、以前に千人規模の食中毒事故を起こした事があったので、余計に身近に感じていた心平だった。


具体的な条件は5個だ。


1、手を薬用洗剤で良く洗い(3分以上)、ビニール手袋を使用し手で直接饅頭には触らない、(菌を付けない)消毒された菜箸やトングなどを使用する。


2、保冷剤、保冷袋、抗菌シートの活用、(菌を増やさない)温度が高いと菌が増え易いので冷やす為の保冷剤や菌が増えないように抗菌シートの使用する。


3、しっかり加熱する、(菌を殺す)現場では中心の温度が85℃以上で一分以上の加熱が義務付けられているが饅頭は蒸すのでその点は、必ず中心温度を測る。


4、汁気や水気を出さないようにしっかり水切りする、(菌を増やさない)菌は水分があると増える。


5、しっかり冷ましてからラップをかける、(菌を増やさない)温かいままで、饅頭にラップをかけてしまうと水蒸気により結露ができる為、水分が多い状態になる。


この為、パートには徹底させないといけないので、パート全員と麗奈には桔平での勤務中では


牛肉の生と二枚貝を食すことはしない、特に牡蠣は食さないとの労働条件通知書兼雇用契約書内で約束を取り付けた。

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