広島の街が一望できる禊萩が咲く丘
@k-shirakawa
第1話
三代目店主の
店の目の前には全国展開の和菓子店としては多種類の菓子を販売している獅子屋があった。その獅子屋は、心平の祖父が拵えた“
さらに昨今の洋菓子ブームとコンビニのスイーツの台頭で心平の店は閑古鳥で、彼が作った和菓子は毎日のように捨てるしかなかった。
そんな時に和菓子店組合の旅行があり、今までは断っていたが両親がまだ自身の足で歩ける内にと一回ぐらいはと親を連れて行った日光見物のおりに宿泊した旅館の店主から、「並んでも買いたいと地元で知る人ぞ知る有名な饅頭屋がある」と聞かされた。
両親やその他の組合の人たちには東照宮の参拝や中禅寺湖の見物をしてもらっている間に心平は一人で日光駅からバスに乗り、あとは徒歩で教わった武平饅頭( 日光市小林二六九〇)を買いに行った。
その饅頭屋には旅館の店主から電話番号を聞き事前に予約して買いに行ったにもかかわらず、長蛇の列で買えたのが二時間後だった。それほど多くの客が買いに来ていたので、その行列の写真も撮ってきたが、心平が日光駅に戻って来た時には組合の者たちと一緒に両親は広島に帰るために東京に向かっていた。
追いかけるように心平も電車に飛び乗った。地元に帰った心平は日光の店の行列と饅頭の全体と断面図の写真を厨房に張り付けて目標とした。この饅頭と同等の美味しさを作り出して一品勝負で売り出すことを決意した。
それはいわゆる“こし餡“が入った黒糖饅頭だった。それもまん丸の饅頭の形はしていなくて、”餡“の部分だけが少し盛り上がった真っ黒で平べったい形だった。後を引く味とでもいうのか、甘さが控えめでそれが抜群に美味しかった。
心平は中学を卒業し専門学校を卒業したのちに国家資格を取り、父の鉄平を師匠として和菓子作りをやっていた彼が今まで食べたことのない美味しさだった。買った当日も食べ、その翌日も食べたが、しっとりしていて大変に美味しかった。
代々受け継いできた、祖父ちゃんが拵えた“
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます