HELLO・DEATHWORLD

白熊堂

第1話

 ハァー…ハァー…ハァー…ハァー


 スコープの画面越しに見えるのは砂漠に有るゴツゴツした岩とそこを左右に通る道だった。


 そして、暫くすると視界の左側から厳つい二足歩行マシン、『スローターギア』を先頭にした輸送車両が列を為している。


 ハァー…ハァー…スゥー


 スコープ画面には望遠画像、相手の索敵範囲の外から極細の赤外線が敵のスローターギアのコックピットに照射され、レールガンが静かに起動する。


 ピピッ、ピピピッ[ロックオン完了、マスター、撃てます]


 スゥー、ピタッ「今っ!」カチッ


 ブゥン!ズドーン!っと先頭のスローターギアのコックピットの横っ腹に小口径レールガンの弾が直撃して貫通、向こう側の岩をも破壊する。


 周りの強化外骨格『マーモ・ルクン』を装備した兵士達がこちらを見た瞬間には多連装ロケット砲から12発のクラスター型ロケット弾が発射され、敵の上空50メートルで傘のように開いたロケット弾からは小さな手榴弾型のクラスター爆弾が降り注ぎ、トドメとばかりに親爆弾が降り注いで敵の『マーモ・ルクン』達を情け容赦なく次々と吹き飛ばした。


 辺りには既に動体反応なし、ミッションコンプリート。


 私はスローターギアの狭いコックピットを開いて外の空気を吸う。


 ぷはぁ~「これで物資が手に入ったねリクロー」

[イエス、マスター]

「その固っ苦しい言葉遣いやめてよね」

[了解です、ラトナ。今から輸送車両を鹵獲しますね]

「宜しくー、私はグロいのは苦手だしね」

[マスター、アレはただのタンパク質と水分に油脂とカルシウムにミネラルの塊です。リサイクル出来る資源ですが]

「そこね、その感覚が私には分かんないの。リクローは同じAIを搭載したスローターギアを壊して何も思わないの?」

[新しいデータや装備が取得出来る良い資源ですね]

「あー、はいはい。全て資源ね」


 私の名前はラトナ、これはゲームでの私のハンドルネームってヤツなんだけど、この世界では私の名前だ。


 数々の戦いのトラウマとPTSDの結果なんだろうか、既に本名も忘れて久しい。


 私のスローターギアの名前はスキュラ、下半身は砂漠戦に特化した蜘蛛のような8本の多脚と戦車の様な上半身に細い両腕を持つ、背部の各種センサー類は遥か上空2000メートルに浮かぶサポートメカ『エンジェルアイズ』から多角情報を得て稼働している。


 なんでこんな事になったのやら。


 私は女の身体をしてるが本来は男だった。


 このふざけたゲームが開始される前はね。


 『クレイジーデスワールド』はグロい表現の有る単なるゲームの筈だった。


 しかも、かなりアナログなタイプの3Dのスマホゲーね。


 そして私は競技者10万を超える中でも上位100人には入るトップランカーだったの。


 でもね、ある日運営が自作AIのサポートを取り入れた本格3Dゲームにアップデートした時にそれは起こったわ。


 最初は、ただのゲーム酔いかと思ったけど凄まじい吐き気と頭痛がして倒れ込んだ人々は次々とその場から消え、残ったスマホには『ハロー・デスワールド』って書かれてたらしいの。


 そして今はアバターの女の子の身体に頭まで引きずられて、すっかり女の子女の子してる。


 この『デスワールド』には『プレイヤー』と『バンデッツ』そして『現地人』がいる。


 ちなみに私みたいなのが『プレイヤー』で、さっき倒したのが『バンデッツ』ね。


 今回は現地人からの依頼でバンデッツ狩りをしたけど、この世界って甘くない。


 特に今居る場所が良くないんだよ。


 ここって砂漠よ?周りにちょっと岩場があるけど見晴らし最高ってどう?狙って下さいって言ってるようなもんじゃん。


 でもね、『クレイジーデスワールド』時代に造ったサポートメカ『エンジェルアイズ』が約に立って今、私は生きてる。


 でも、これって本当に生きてるって言えるのかな?

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