第234話

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湊(ジュン) side



「行こう」




「ナツ…。本当に大丈夫かな」


「往焚、ナツが外すわけない」


「そうだよ、な」





装備を確認する。

地図は全て頭に入れた。



必要な爆薬や武器、情報は全て揃った。

抜かりは、ないはず。






あの日以来、ゼロは俺の元に現れなくなった。

実験は続いているらしいから、まだ生きているだろう。



だが、もうかなり厳しいはずだ。

限界だろう。




何か仕掛けてくるかと待っていたが、何も動きがない。

これ以上待てば敗北──彼女が死ぬ。





目を閉じる。


ゆっくり息を吸い込んで肺いっぱいに空気を取り込み、ゆっくりと吐き出していく。








〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜


3ヶ月前 鬼逸(ジュン) Side






「さて、聞きたいことは1つなんだけど」




あの日、ゼロと別れて部屋に戻ったあと秋信と往焚に話しかけた。

その時、2人がピクリと一瞬だけ反応する。



「…なにかな」





硬い表情の往焚。

秋信の顔も険しい。





「あなた達はNo.000の手駒?」




窓の淵に少し腰を預け、足を組む。

上から見下すように威圧する、




狙い通り怯む2人から目を逸らさない。


ここで視線が揺れれば何か勘づかれる。

それは面倒だ。





「…そうだ。俺たちはあんたの見張りを頼まれてる」



「往焚!」






秋信が焦ったように止めるが、アキは俺から目を離さずに答える。

嘘はねぇみてぇだな。





「そっか。だったら、」





ウィッグを外し、唇につけていたリップを手の甲で拭う。





「俺が男なのは知ってんだろ」


「………っ!」





黙り込む2人。

それを一瞥して立ち上がる。



ゼロの動きは読めた。

今やってる実験はおそらく、脳の情報回路から

"記録"をコンピュータへ直接ダウンロードすること。


だとすると、俺たちに送られてくるゼロからの連絡は、その回路を逆手にとって自分の脳から送ってきてるんだろう。




ゼロの1つ目の目的はそれだ。

今、ゼロの脳はインターネットと繋がっている。

組織を混乱させるなんて簡単にできるだろう。



それどころか建物ごと木っ端微塵こっぱみじんな上、再起不能まで追いやれるはずだ。




ただし、これは体にかなりの負担がかかっている。

体に特殊な電流を流して行っているのだろう。

そのせいで何度も心配蘇生をしていて体を酷使している。

さらに、大量の情報を脳が処理しきれずに悲鳴を上げているに違いない。



ということは…。

体を起こすどころか目を覚まさない可能性もある。

つまり、逃げることができない。

ゼロは、自分ごと無名組織を潰すつもりだ。






かってに死なれては困る。

まだまだ、聞きたいことがあるのだ。



1発殴ってやりたいこともある。






やっぱりあいつは、悪魔になりきれない。


優しすぎる。

その証拠がこの2人だ。




絶対死なせない。


俺に生きろと言ったのはお前だろ。





「このままだと、"お前らの恩人"であるあいつは死ぬ」


「なっ…」


「………っ!」




秋信と往焚は動揺しているようだ。

やはり、知らされていなかったか。


俺がゼロを追わないようにするためだけに監視につけたのだろう。





「手を組まないか?」






2人は思案したあと、しっかりと縦に首を振った。









3ヶ月前 end







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