第30話
〜・〜
ゆっくりと目を開ける。
散々好き勝手に男に抱かれ、気を失ったようだった。
眠ったのはいつだったのだろう。
相変わらずカーテンは開けられておらず、部屋は薄暗い。
日が昇る時間ではないのか、日が差している気配もなかった。
体を起こそうと腕に力を込める。
しかし、男に抱かれた反動なのか、腕はなかなか力が入らなかった。
さらに、起き上がろうと力を入れたお腹には重さと痛みが走る。
一気にだるさが押し寄せ、けっきょくそのまま横になることにした。
はぁ、とひとつため息をつく。
──……クスッ
………今、ものすごく堪えてたのに堪えられなかった感のある、なおかつバカにしたような笑いが聞こえた気がする。
ギギギッと音がしそうなくらいぎこちなく声の方向を見やると、鬼畜ヤ……男がいた。
ふと自分の手首を見ると、きつく縛られていた跡があざになって残っていた。
「……一日中寝てたな」
い、1日中だと…?そんなバカな…。
「……動けねぇんだろ。
まぁ、そのためにしたんだけど」
……この男は本当に鬼畜悪魔ヤロウだと思う。
他にも方法あっただろぉぉぉぉぉ!!
「…………」
私は無言で男を見つめた。
男は濡れた髪をそのままに、黒のV襟ヒートテックにスエットのズボンというラフな格好であった。
ベッドの脇、横になっている私の脇腹のすぐ横あたりに腰を下ろし、足を組んでいる。
その手にはタバコがあり、それをくゆらせていた。
──ゆらゆら、ゆらゆら
いつの間にか私の視線は、男から煙の方へと変わっていた。
「………………」
「………………」
しばらく沈黙が続く。
だが、居心地の悪いものではない。
しばらくして、男が口を開く。
「……お前は、情報提供と喘ぎしか声に出さねぇんだな」
視線も顔も体もこちらに向けたりはしない。
ただ、虚空を眺め、タバコをくゆらし、独り言を言うように。
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