第28話






──ギシッ









ベッドに片膝をつき、私に覆いかぶさるように両手が顔の両脇に付けられる。









そしてそのまま、

──キスをされた。










触れるだけの、軽いキス。







「………お前を拾ったのは、俺だ」









不意に男が私に話しかけてくる。








「…俺以外に触れるのも会うのもやめろ」






断定的な、口調。

やはり、あの”男”だ。




私は頷いた。











「……今日からここを出るな」



もう一度頷く。


男は少しイラだったように、その瞳に鋭い光が宿していた。





「…お前が持っている情報、全てロックしろ」








私が暗証番号を、と告げようとすると、男がそれを言わせないというように先に口を開いた。






「暗証番号は、O、S、E、Z、U、I、A、R、Eだ」






私は、目を見開いた。

絶対に誰も知らないはずなのに。





「暗証番号、あってるだろ。変更しろ」






暗証番号、と言いながら、数字ではないそれ。誰もが知り得ないはずなのに。






「これからは、ーーーーーだ。いいな」










私は、さらに目を見開く。




誰も答えられない、数字。




5桁も6桁もない、短い、”番号”。

だが、誰も知るすべがない番号。








その後、男は私の服に手をかけた。






もともとはだけていたのだが、服のボタンを一気に飛ばされる。





下着はキスをされている間に、男によって器用に奪われた。











そのまま全身をくまなく男の手が滑り、撫でられる。






慣れないその感覚に、体はどんどん熱くなっていった。


なぜ熱くなっていくのかも、男の意図するものが何かもわからず、戸惑う。











たまに耐えきれなかった声が漏れるのを、男は満足そうに口の端を上げる。














そして、そのまま。















男は私を抱いた。















それはそれは容赦無く。

思いっきり。





泣こうが喚こうが関係なく。


………泣いてないけど。













一応初めてだったというのに、本当に容赦無く。











──鬼畜な野郎だ。このヤロウ。











痛いわ、苦しいわ、なんかわからん感覚だわ、突然ビクッとなるわ、めちゃくちゃな気分だった。











けれど。












そんな姿を見て、男は愉快げに。

ずっと口の端を上げたまま、私を貪り続けた。









  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る