君と劫の中

初乃 至閉

君と劫の中

お風呂に入る君、僕は君の様子を知らない。

湯船で一体何を考えているのだろう


甘い飴色釦を掛け違えて

窓の外が明るくていつも苛立ってばっかで

ずっとずっと夜の空気だったら幸せの方へ

むかえたのかな。


夜に洗濯機回すと近所に迷惑だよ。

君は冷静に叱ってくれた。

そんな会話もなくなった行事と僕は

深夜二時半にいつも洗濯機を稼働させる。


君のブレザーからこぼれ落ちた飴玉のような釦をそっと口に入れ舐めてみた。

あの時の味あの時の香り

気無意識のうちに僕は雨を飲み込んでしまっていた

罪悪感と共に恍惚とした没落感というか、

なんというか…見当のつかない興奮を覚えていた。


君がいた夜僕は何をしていたのだろう。

よく思い出せないまま朝日が昇るこの時間に就寝する。


ただ僕はおやすみとおはようを言ってくれる人がいたらよかったのに

どうだろうか、今はそんな気持ちになれないようになってしまった。


手紙を読み返す日々、もう水性ペンで描かれた言葉は汚く滲んでよく見えなくなってしまったよ。


この部屋でさえ僕の表現や気持ちで埋めれなかったけど、人の小さな心臓は僕で埋めれるとまだ、希望、なのかとにかく絶望感はない。

自己嫌悪が激しい僕でも僕を求めてくれる彼女がいたから。


造られた自己嫌悪なのも自己否定をしている僕が好きなのも全部洗濯機と一緒に綺麗になっちゃって

時間が無いからとカップ麺を食べると

僕はせっかちでいつも麺が硬い 

1人で食べる食事なんて凝ったもの作ったって過去を思い出してしまうだけと

気休めばかりのビタミン剤と栄養ドリンクを流し込んだ。


いつ、この日常は終わるのだろうか。

あと何日あと何日

1000日程度で終わる人生だったら

それも欲張りすぎか


本当は夜のことも覚えている

24時間営業のコンビニへ深夜に行って冷たい冬の空気に耐えながら暖かい飲み物と甘いものを買って

歩いて家へ帰るたまにする贅沢。

車で夜道のドライブをしたような気がする。

少し人気の無い田んぼ道に行くと猫が道路で寝ていて、可愛いねなんて思ってもないけど愛であったり。


ああああああああああああああああああああ


こうして人は最期を迎えるんだね。愛していたよ心から。僕は君を救えなかった。僕以外の誰かがまた君の月明かりになってくれて

救われるはずないのもわかってるのに救いを待ってるんだね。


君の髪みたいに細い糸が心の中で絡まって解けない。釦を縫い付けたくても僕の針、


ああ、もう2時半かそろそろ洗濯機を回そう。

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君と劫の中 初乃 至閉 @hatsunoshihei

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