掌編「マンモス学校」
「今度引っ越す場所なんだけど、聞いた話だとある学校の生徒数が二千人以上もいるらしいのよ……とんでもないマンモス校よね」
「へえ」
「今の時代だと珍しいわよね。お母さんがまだ小さかった頃は、一クラスに六十人もいたものよ……まさか令和になってそんな光景を見ることができるかもしれないなんて……、楽しみだわ。授業参観にいくモチベーションが上がったわよ」
「昔を懐かしむためにいくイベントじゃないけどな。まあ俺をじっくり見られても困るんだけど……ふうん、マンモス校ねえ」
「あ、ちなみに、あんたの転校先はそこ一択だから」
「えぇ、選択権もないのかよ……」
「ま、そもそも選択肢がないもの。引っ越すところね、学校がそこしかないみたい。周辺にも一切なくて、広範囲の中で、学校はひとつだけ。つまり十数校を潰して一校を作ったようなものね」
「じゃあ寄せ集めただけじゃん。……いや、それでも生徒数だけを見れば少子化を誤魔化せるか……?」
誤魔化せてはいないが。
しかし、なんだか子供が増えたように感じるのは事実だろう。
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