二十二話 二日目 昼

扉から出れば、患者と鉢合わせ。


中症者の皆。私が帰ってこないのを気になって向かったらしい。彩芽君がノートに大丈夫と書かれてあった。

 いつもはノートの罫線からはみ出ずに、どんな所で書いても綺麗なのに。今は、はみ出てたり少しがたがたで、緊張や不安を感じながら書いているのが分かる。


『ありがとう。大丈夫だよ。』


少し驚いたが、可愛く感じてしまって緩くなった口元を隠す。

 でも罪悪感はあるので撫でておく。


「かわいこぶってんじゃん。」

「あはっw。確かにぃ。」

そう言ってた2人を軽くあしらおうと視界をずらしたその瞬間。


「あだっ!」「ひっど!!!」

2人がまぁまぁ厚めの本で頭を殴られた。犯人は間違いなく頭を撫でてた彩芽君だ。彼等に圧をかけて、「わぁ」と声が出てしまう。


「(手加減はした)」

「彩芽ちゃん。病棟で怪我人を出すのはやめてほしいかな...。」


反省しない彩芽君。残り2人は頭が痛くて屈んだ体勢で酷いや人の心を説いている。

 皆バラバラなこの空間を纏める為に報告を大きい声で報告をしながら手を叩く。

『じゃあ自由行動だね!今日から食事は選択制になったから。』


朝食は、こんな状況で食欲は出ない子が居てもおかしくないし。ただ栄養失調になる患者や医者がいれば廃止。

だから皆がお互い気をつけ合う。クラリアが考えた仕組みの一つだ。



「じゃあ一緒に食べましょ。先生達。」

「いいねぇ。今日のメニューなに?」

私が報告を終えてその場を後にしようとすると全員で行こうと提案がかかる。

 イロは仕事を早めに終わらせたいからと断って、何処かに行ってしまう。私は彼を目で見送りながら、患者達についていく。


「?」

「行こうよぉ〜先生〜。」



『........なんでもなーい。』

私は蛍光灯がチカチカと暗闇と光が交互する部分に足を踏み入れる。

左足は床にある線を踏んで、右足はそのすぐ横に並んでは置かれていくを繰り返して規則のように決まった道筋を歩く。

 黙々と床を見続けているとコンベアに立っている気分が味わえた。


階段から上がった先には鏡があって、先に通っている患者達と私が見えた。話に夢中みたいで笑顔で話している。

 一方で私は“君”にも見せれないような酷い顔。患者と居るはずなのに笑顔が崩されていて最悪だ。


『(笑顔、笑顔、)』



「先生!先生も花の世話します?最近は季節が変わったので他の花に変えましょうよ。」


「花束作ってみたいなぁ。派手な奴。」

「(賛成。)」


『そうだね。何が咲いてるのか、教えて?』

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