決着
ロナルドの重力を操る魔法の攻撃が次々と繰り出される中、セレフィナは心の中で葛藤を抱えていた。「このままでは、周りの観客にも被害が出てしまう。これ以上の魔法を使うわけにはいかない…」彼女は観客たちのことを考え、戦いの行方に頭を悩ませる。
自分が本気を出せば、周囲にいる者たちがどうなるかは想像に難くなかった。観客席で驚き、恐怖に怯える顔が浮かぶ。セレフィナはそれを思い出し、心の奥底にある冷徹な決断を下す。「魔法は使えない。なら、肉弾戦しかないか…」彼女の表情は次第に緊張感を増していく。
肉体の強化─。
ただそれだけのことだが、デーモンロードとしての力を開放し、彼女の真の姿を見せる時が来た。セレフィナは心の中で魔神の力を呼び起こし、身体の隅々に流れ込む力を感じた。これまでとは異なる重圧感、圧倒的な力が彼女を包み込む。瞬時に視界が広がり、周囲の動きが緩やかに見える。
「ロナルド、悪いけど…ここからは少しだけ力を出させてもらうよ。」セレフィナは一歩前に出る。その瞬間、周囲の空気が変わり、重力の圧力に押しつぶされるような感覚が周りを包む。
彼女の動きは俊敏で、まるで風のように軽やかだった。ロナルドが再び魔法を発動させようとしたその時、セレフィナは無音の速さで彼に接近する。「この距離なら、魔法を使う余裕はないだろう。」
肉体の力を最大限に引き出し、彼女は一瞬の隙を突いてロナルドに迫った。デーモンロードとしての圧倒的な力、そして圧迫感を持つその姿は─観客たちには殆ど消えたようにしか見えなかったが─衝撃を与えた。彼女は冷静に、その一瞬を見逃さずに攻撃を仕掛けるための準備を整えていた。
ロナルドは彼女の動きに気づき、焦りが見えた。「まさか、肉弾戦に来るとは…!」彼の思考が追いつかないまま、セレフィナの接近を許してしまった。
セレフィナはこの瞬間、彼女の中の闘志が燃え上がり、魔神の力が全身を駆け巡るのを感じた。「さあ、ロナルド。我の力、受けてみなさい。」彼女の中にある覚悟が、戦いへの意欲を一層強くしていった。
* * *
ロナルドは必死に距離を取ろうとするが、セレフィナの速度と力は尋常ではなかった。彼が再び星魔法を展開しようと手をかざすよりも早く、セレフィナは彼の懐に飛び込み、鋭い拳を放つ。
「これだけの速さ…!」ロナルドは驚きの表情を浮かべながら、寸でのところで身を捻り、かろうじてセレフィナの一撃をかわす。しかし、その動作の重みに反して、セレフィナは次の一手もすぐに繰り出していた。彼女の体捌きは一瞬の隙もなく、まるで流れるような連続攻撃がロナルドを追い詰めていく。
ロナルドは再び重力魔法を駆使し、自らの体重を増幅させてセレフィナの攻撃を耐える態勢を取る。さらに周囲の地面も彼の魔法の影響で大きく歪み、圧力が空間に重くのしかかった。彼の表情には焦りが見えたが、その眼光はまだ消えていない。「俺の真の力を見せる時だ…!」
ロナルドが放ったのは、独自に編み出した「重星グラビティスター」と呼ばれる魔法。彼の周囲に黒い星がいくつも浮かび上がり、次第に巨大な重力場を形成し始めた。その圧力により、周囲の空気は波打ち、観客たちの間にも重い緊張感が漂う。
だが、セレフィナはそんなロナルドの技にも微動だにせず、むしろ楽しむように微笑みを浮かべた。「ふぅん、それが君の切り札か。なかなかやるじゃん。」彼女はその場に立ち止まり、改めてロナルドの実力を見定めているようだった。
ロナルドの重星が彼女に迫り、巨大な重力場で彼女を圧し潰そうとするが、セレフィナは一歩も動かずにその場に立っている。「こんな程度で足止めできると思ってるの?」
彼女は、体内に眠る魔神の力をさらに引き出し、自分の周囲に薄い青白いオーラを纏い始めた。それはロナルドの重力を軽々と押し返し、彼の魔法が無力化されるようだった。圧倒的な存在感と余裕に、観客たちは息を呑む。
そして、彼女はロナルドに向かって一歩一歩近づいていった。その一歩ごとに重力場が崩れ、彼の魔法が次第に効力を失っていくのが感じられる。「ここまで頑張ったんだから、少しは褒めてあげるよ。」セレフィナの柔らかな笑顔には、余裕と共にロナルドへの敬意も感じられた。
ロナルドは、もはや自分の限界を感じつつも、最後の力を振り絞る。「これで…終わりだ!」叫びと共に重星の力を最大限まで高め、一瞬にして彼女を押しつぶそうとする。しかし、セレフィナはそのすべての圧力を片手で押し返し、冷静に呟いた。「ありがとう、ロナルド。いい戦いだったよ。」
彼女の手が軽く動くと、重力場が崩壊し、ロナルドの魔法は完全に消滅した。
「ま、参った─。」
その場には、セレフィナの圧倒的な勝利が刻まれ、観客たちはその光景に心を奪われていた。
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