魔王、武闘大会の話を聞く



今日はアルヴィンからの呼び出しがあった─。



彼女は王都の冒険者ギルドの執務室の前に立っており、部屋の中には、ギルド長アルヴィンが待っている。



「セレフィナ、来てくれてありがとう。」アルヴィンは微笑みながら彼女を迎え入れた。


「何か急用か?」セレフィナは少し警戒しながら尋ねた。



「実は、ギルド内で武闘大会を開くことになったんだ。」アルヴィンは真剣な表情で言った。「この大会は、王都にいるSランク冒険者にはなるべく参加してほしいんだ。そこで君にもぜひ出場してほしい。」



「武闘大会…?」セレフィナは考え込む。彼女はその名前を聞くと同時に心の中で期待と興奮が膨らんでいくのを感じた。「それは面白そうだな。でも、なんで急にそんなことを?」



「最近、他のギルドからの挑戦状が増えているからだ。」



それは、ギルドの力を誇示するための重要な機会だった。王都の冒険者ギルドは、その名声と実力から、周囲のギルドから注目されていた。競争が激化する中で、他のギルドは自らの力を示そうとし、さまざまな手段で挑戦をしてきていた。彼らは名声を得るために、ギルド内の強者同士を戦わせ、互いの実力を試し合うことを望んでいた。




このような状況は、ギルドのメンバーにとっては好機であり、特にSランク冒険者にとっては、自身の力量を証明する絶好のチャンスでもあった。アルヴィンはそのような競争の中で、セレフィナの存在が仲間たちに勇気と希望を与えると確信していた。彼は、彼女の参加によって、ギルドがその名声をさらに高め、他のギルドに対して強いメッセージを送ることができると考えていたのだった。




アルヴィンは続けた。「我々の力を見せるためにも、この大会は必要なんだ。そして、君の力が加わることで、他の冒険者たちも士気が高まると思う。」



「ふむ…そうか。」セレフィナは考えた。「でも、私は強い敵と戦いたいだけだ。大会で退屈するのは嫌だぞ。」




「安心してくれ。大会には強力な冒険者が揃うし、君の力を試す絶好の機会になるはずだ。」アルヴィンは自信を持って言った。「もちろん、優勝すれば、報酬も用意されている。」


「報酬?」セレフィナは興味を引かれた。「何を用意してくれるんだ?」



「それは…君が望むものなら何でも用意するつもりだ。」アルヴィンは真摯な眼差しを向ける。



「よし、参加することにする。」セレフィナは満足そうに頷いた。「その報酬、楽しみにしているからな。」



アルヴィンは笑顔を浮かべ、「それじゃあ、準備を整えておくから、君も気合を入れて挑んでくれ。」



セレフィナは意気揚々とした気持ちでギルドを後にした。彼女の心は冒険への期待で高鳴り、次の戦いを待ち望む感覚が湧き上がっていた。彼女の目には、武闘大会がただの戦いではなく、新たな刺激と楽しみをもたらすものであることが明らかだった。



* * *



そしてさっそく、週末が訪れた。晴れ渡った青空の下、王都の闘技場には多くの人々が集まり、熱気と期待感が漂っていた。闘技場の周囲には、王国中から集まった冒険者たちが見守る中、セレフィナもその一員として参加することになっていた。




「今日は楽しむぞ!」彼女は自分を奮い立たせるように言い聞かせ、心を高ぶらせた。




闘技場の中央には、円形のリングがいくつも設置され、50人ずつの組が数多く作られている。エントリーした冒険者は500名にも上り、その中から決勝トーナメントに進むのはわずか30名。予選を勝ち抜くためには、リングで上位3名まで残ることが求められた。




セレフィナは自分が組に選ばれたリングへと向かい、周囲の仲間たちに目を向けた。ここにはさまざまな個性を持った冒険者たちがいる。AランクやBランクの強者たちも見受けられ、彼女はその中でも負けない自信を秘めていた。




「さあ、始まるぞ!」ギルドの長が開始の合図を告げると、周囲がざわめき、各リングで戦闘が始まった。セレフィナは即座に自分の位置を確認し、冷静に状況を見守った。




ルールは厳格で、殺傷は禁止されている。故意の致命傷を与えないようにしながら、セレフィナは周囲の状況を把握し、戦いが進んでいく様子を楽しんでいた。




リングの中では、彼女の目の前で二人の冒険者が激しくぶつかり合っている。攻撃をかわし、素早いパンチやキックが飛び交う中、彼女は冷静にそれを観察した。ここで自分が何をすべきかを考えながら、適切なタイミングを見計らう。




「このままでは、すぐに人数が減ってしまうな。」セレフィナは内心で呟き、予想以上に熾烈な戦いに興奮を覚える。彼女の計算通りに進むか、それとも意外な展開が待ち受けているのか、リングの戦いは続いていた。




戦闘は次第に過熱し、各リングで何人かが倒れ、また新たに立ち上がる者もいた。セレフィナはその流れの中に身を投じ、仲間たちとの絆を試すかのように、戦いに挑んでいく決意を固めていた。

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