ギルド長アルヴィンとの邂逅と、魔力測定



王都にそびえる冒険者ギルドの本部。大きな扉をくぐると、今日も多くの冒険者たちが酒を酌み交わし、次なる依頼について話し合っている。そんな喧騒の中で、一人の男性が静かに記録簿をめくっていた。王都のギルド長、アルヴィンだ。




彼は長年ギルドの運営を支え続けてきた経験豊富な男で、冒険者たちの癖や実力を見抜く目も確かだ。そんな彼の元に、信じがたい知らせが届いたのは、数日前のことだった。王宮からの紹介状がギルド本部に送られ、その内容を読んだ瞬間、思わず眉をひそめてしまった。




「まさか…魔法使いがギルドに加入するとはね。しかも、あの王が直々に推薦してきたとなれば、只者ではないのだろうが…」




アルヴィンは紹介状の内容を何度も読み返し、戸惑いを隠せなかった。通常、冒険者ギルドは戦士や盗賊、探索者といった職業の者が多く、魔術師が加わることは稀だ。しかも、王が推薦する人物となれば、異例中の異例だ。




「セレフィナ…か。」




その名を口にしながら、彼はどんな人物なのか、想像を巡らせてみる。経験上、魔術師とは気難しく、単独行動を好む者が多い。しかし、王がこの者をギルドに送り込む理由は何か。そこに秘められた意図を推し量ろうとするが、全てが未知数だった。




「王がこうも熱心に推してくるのだから、相応の覚悟は必要だろうな…」




アルヴィンは、ギルドの運営者としての直感で感じ取っていた。このセレフィナという人物が、ただの冒険者ではない何かを秘めていることを。






ギルド本部の重厚な扉が静かに開き、朝の陽光が差し込む中、セレフィナが堂々とした足取りで入ってきた。その姿は場内のどの冒険者とも異なり、威厳と気高さを兼ね備えたものだった。ギルド内のざわめきが一瞬にして静まり返る。目を引くのは彼女の凛々しい表情と鋭い眼差し。彼女の周りには、まるで見えない空気の壁があるかのように、冒険者たちは彼女に視線を向けながらも距離を取っていた。




そんな場内の異様な空気を感じながら、アルヴィンは彼女をじっと見つめた。冒険者たちから受ける圧迫感とは違う、底知れぬ力を感じさせる存在感。彼はすぐに立ち上がり、セレフィナに向かって一歩前に出た。




「君が、王から推薦を受けたセレフィナ殿か。王都ギルド長のアルヴィンだ、よろしく頼む。」




アルヴィンの言葉に、セレフィナはふっと微笑みながら軽く頷いた。その仕草には自信が満ちており、まるで冒険者ギルドの場が彼女にとって当然の居場所であるかのようだった。




「紹介状、確かに受け取ったぞ。…ただ、正直驚いたな。王からの推薦で、しかも君ほどの人物が冒険者ギルドに加わるとは。」




「そうか?」セレフィナは興味なさそうに肩をすくめる。「王に頼んで紹介状を書いてもらっただけだ。我としては、ただワクワクすることがしたいだけだからな。」




その言葉にアルヴィンは一瞬驚き、そして小さく笑みを浮かべた。「なるほど、そういうことか。では…こちらも誠意をもって対応させてもらおう。」






セレフィナの目が少しだけ輝いた。彼女はこの新しい場所で、自分の期待していた何かが始まる予感を感じ取っているようだった。そしてその視線を感じたアルヴィンもまた、彼女の未知の力が、ギルドの中に新たな波をもたらすことを悟っていた。






* * *






「じゃあ、早速だけど君の魔力を測定させてもらうよ。」アルヴィンは、セレフィナの魔力を知ることがこの先の活動において重要であることを理解していた。彼は、自らの周囲に魔法の道具を並べ、静かに呪文を唱え始める。




すると、空気が震え、緊張感が漂った。アルヴィンの手からは、淡い光が放たれ、魔法の結界が形成される。その中にセレフィナは立たされた。






「これから、君の魔力を測るから。この結界の中に魔力を集中させてくれ。」アルヴィンは真剣な表情で彼女に指示した。セレフィナは少し緊張しながらも、目を閉じ、心の中にある魔力を意識した。






魔法の結界がその強さを示すように、まるでセレフィナの周囲に小さな星々が舞い降りてくるような光景が広がった。アルヴィンはその光の強さを見て、彼女の可能性に目を輝かせた。






彼女の中から流れ出る魔力は、まるで滔々と流れる川のように、穏やかでありながら圧倒的な力を秘めていた。アルヴィンはその感覚を感じ取り、目を見開く。






「これほどの魔力を持つ者は…」彼の心中に驚きが広がった。しかし、計測器はなぜかその値を表示しない。故障でもしているのか?とアルヴィンは訝しむ。彼は機器を再調整しようとしたが、光は依然として彼の予想を超えていた。






セレフィナは心の中で「面白いものを人間は発明するものだ」と思った。自らの魔力を測るための機械が目の前にあること自体、彼女にとって新鮮な驚きであった。人間の創意工夫が、彼女の魔力を測るための手段として使われていることに、興味が掻き立てられる。こうした道具を使い、彼らが自らの限界を知ろうとする姿勢に、彼女は感心していた。






「まさか、こんなことが…」彼は焦りを感じ、少し戸惑いながらも言葉を続けた。「ひとまず、君の魔力値を推定で記録しておくよ。これは後で調整できるから。」






セレフィナは微笑みながらも、その表情には自分の力が如何に大きな影響を持つかを理解している様子が見て取れた。彼女は新たな冒険の始まりを、胸の高鳴りと共に迎えていた。

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