ゼルナと再会



森から漂う黒い霧は、徐々にその輪郭を濃くし、街へと向かって迫り来る。まるで怨念の塊のように、異様な形状の魔物たちが次々と霧の中から姿を現し、その数は増え続けていた。セレフィナは静かに指を一振りし、周囲の空気に魔力を流し込むことで防御の結界を展開する。






「これだけの数を揃えるとは…ただ者ではなさそうだな」




遠くから響く足音と共に、王国の兵士たちが整然と配置についていた。彼らもまた、恐怖を感じながらも自らの役割を果たすべく奮起していた。リリィが兵士たちに指示を出し、動揺することなく防衛線を保つように声をかけている。






「セレフィナ様、我々もすでに準備は整っております。どのように戦を始めましょうか?」




リリィの問いかけに、セレフィナは静かに首を振った。「我がまず前線に立つ。君たちは後方から支援をしてくれ。我が目の前の敵を一掃するまで、決して陣を崩すな」






彼女の決意に触れ、リリィは力強く頷く。セレフィナが前へと歩を進めると、魔物たちの群れが不気味な声をあげ、彼女に向かって襲いかかってきた。だが、セレフィナは微動だにせず、まるでその場に風が集まるように、両手を静かに広げた。






「闇を破り、我が命ずる者に光を――〈雷霆閃光〉!」




瞬間、彼女の掌から迸った雷光が、周囲を一瞬で焼き払った。無数の魔物がその閃光の中で消滅し、周囲には焦げた匂いと静寂だけが残る。兵士たちはその圧倒的な力を目の当たりにし、思わず息を呑んだ。




「これが…セレフィナ様の力…」






一方、森の奥からその様子をじっと見つめる異形の者たちの存在に、セレフィナは気づいていた。視線の先、闇の中に潜む彼らが次の動きを見定めているのを感じ取る。




「なるほど、ただの魔物の群れではないか…」




再び迫りくる魔物たちの波を前に、セレフィナは冷静に呟いた。「我を試すつもりか。ならば、受けて立とう」






その言葉が響くや否や、彼女の全身から放たれる凄まじい魔力の波動が周囲を揺るがせた。圧倒的な力を前に、闇の者たちが今にも動き出そうとしていることを、セレフィナは本能的に感じ取っていた。




その瞬間、ゼルナの気配が背後に現れ、セレフィナの横に並び立った。






「セレフィナ、どうやら俺たちの出番らしいな」




ゼルナは穏やかな笑みを浮かべながらも、瞳の奥には鋭い光が宿っていた。彼もまた、この未知なる敵に対し興味を抱いているようだ。




「ゼルナ、好きに暴れさせてもらうぞ。我も…この者たちの目的を知りたい」




彼女がそう言うと、ゼルナは一瞬だけ彼女に視線を向け、軽く頷いた。そして、二人の周囲に漂う闇の気配が、ついに動き出した。






「行くぞ、ゼルナ。我らがこの地を守るために!」




セレフィナの言葉と共に、彼女とゼルナの間に静かな緊張が流れる。目の前には迫り来る魔物たちがうねり、彼らの体からは不気味なオーラが漂っていた。異形の者たちが一斉に襲いかかる瞬間、セレフィナは素早く両手を前にかざし、さらなる魔法を唱え始めた。




「我が意志を宿し、精霊よ、ここに降臨せよ!〈光の盾〉!」






彼女の叫びと共に、光の膜が広がり、周囲を覆い尽くす。光の盾は、迫る魔物たちの攻撃を無効化し、彼らが弾き飛ばされていく様子を見せた。その光景を見たゼルナは、流れるように前に出て、次の行動に移る。






「おい、これで終わりだと思うなよ!」




ゼルナは笑みを浮かべながら、さらに強大な力を解放した。彼の体からは、古代の力が宿った龍のエネルギーが立ち上り、その姿はまるで本物のドラゴンがそこにいるかのように見えた。




「竜の力を以て、我が敵を打ち砕く!〈ドラゴンブレス〉!」




彼が口から放った炎は、まるで竜巻のように渦を巻き、目の前の魔物たちを呑み込んでいく。焼き尽くされる魔物たちの叫びが、戦場に響き渡り、周囲は一瞬静寂に包まれる。兵士たちは、目の前で繰り広げられる力の激闘に驚愕し、呆然とその光景を見つめる。






セレフィナはその様子を見て、ゼルナの力がどれほどのものであるかを改めて実感した。「ゼルナ…!すごい力だ。彼と共に戦えることに感謝しなければならない」と、心の中で思った。






しかし、彼らの戦いはまだ始まったばかりだ。魔物の群れは再び集まり、彼らの背後から新たな存在が現れる。それは、先に見た魔物とは異なり、まるでその場の空気を吸い込んでいるかのように重苦しい圧力を持っていた。




「なに…あれは?」




セレフィナが視線を向けると、その存在がゆっくりと近づいてくる。異様な体形をした魔物が、全身を黒い霧に包まれながら、彼女たちに迫ってきた。その目は漆黒で、暗い炎のように揺らめいている。






「この者たちは…ただの魔物ではない。何か特別な目的があるに違いない」




ゼルナもまたその存在に気づき、警戒の表情を浮かべる。「まさか、これが彼らの本当の力か?」






セレフィナはしっかりと呼吸を整え、周囲の兵士たちに視線を送り、決意を新たにする。「皆、あれが本当の敵だ。私たちの力を合わせて、立ち向かおう!」




彼女の声が響くと、兵士たちはその言葉に奮起し、再び戦う準備を整えた。彼らの目には、恐れを振り払う決意が宿っていた。






「ゼルナ、今度は私たちが力を合わせて、奴らを迎え撃つぞ!」セレフィナが言うと、ゼルナは力強く頷き、共に立ち向かう準備を整えた。




「さあ、行くぞ!」




その瞬間、二人は同時に突進し、異形の者たちへと挑みかかっていった。彼らの戦いの幕が、再び上がったのである。

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