魔王を倒したはずの勇者の、ほのぼの生活
@yuu001214
褒美と自由を
世界を…
人類を…
この世のすべてのものを、支配せしめようとする者…
魔王がいた。
力は強大。
膂力は強く…
魔法のレパートリー…
そして、この世の誰よりも数多スキルを所有している。
その数は双方、優に百を超え…
きっと彼は、長い寿命の中で力と仲間を蓄えてきていたんだろう。
そしてそんな魔王の住処、魔王城で…
俺たち勇者パーティと魔王は、今壮絶な戦いを繰り広げていた。
ただそれも今、とうとう終わりを迎えようとしている。
魔王から放たれている暗黒の光線…
それを今一人の男が、金色に光る盾で俺たちを守っていた。
「フェデ…、ま、まだか…」
必死に、魔王の攻撃から俺たちの盾となってくれている男…
ガネルが、何とかそう声にしてくる。
俺たちよりも前方にいるガネルのその言葉に答えるため、俺はすぐ隣にいる女性の顔に視線を向ける。
そして…
「ミア、まだかっ!?」
「フェデ様、も、もう少しです…」
ミアという名の女性…
今、魔王と繰り広げられている壮絶な戦い…
そのせいで、今は彼女の着ている服は汚れてしまっているが…
日頃は真っ白…
それはまるで、穢れ一つも付いていないかのような…
いや付くことが許されないかのような、ただただ白いローブ…
その名も『聖衣』。
そしてそんな『聖衣』を身に纏うことが許された、この世でただ一人だけの人物…
聖女。
そんな彼女が、今俺の剣に魔王を倒すための聖なる力を籠めていた。
そしてそんな聖なる力が籠められいくほど、俺の持つ剣が優しくそして清らかな光を身に纏う。
その力に中(あ)てられるだけで、この戦いで負った傷は癒え、力が湧き出るようだった。
ただ、今はそれに気を取られている時じゃない。
「ミア頼む。急いでくれ…
このままじゃ、ガネルが…」
「分かってます。分かってますよ。でももう少しなんです。」
「くっ…」
魔王の攻撃を必死に耐えてくれてるガネル…
そして今、自分の残った魔力を俺の剣に授けてくれてるミア…
ミアは苦痛に歪めた顔をしていて、彼女が精一杯していることが伝わってくる。
だけどその間、ガネルが必死に耐えてくれてて…
今自分が何もできないという歯がゆさが、どうしても自分の心を急かしてきていた。
そして…
「ぐっ…、うぉぉぉぉぉ…」
ガネルから、さっきよりも苦しそうな声が漏れ始める。
どうやら魔王が光線の威力を上げたらしく…
光線の大きさが一回り大きくなっている気がした。
「ま、まだか…」
そう声を発するガネルは、もう限界のようだった。
だから、俺がまたミアを見た時…
「終わりました…
終わりましたよ!!!」
彼女がそう声をあげた。
「あぁ…
ガネル終わったぞ。もう少しだ。もう少しだけ耐えてくれ!!!」
「あ、あぁ…
わ、分かった…」
俺はガネルにそう声をかけた後、ガネルともミアとも違う場所…
勇者パーティ、最後の一人へと視線と声を向けた。
「アイラ!!」
俺がそう彼女の名を呼ぶと、すぐに…
「分かったわ!!
じゃ―行くわよ!!!」
彼女がそう返してくるとすぐ…
彼女の周囲を、彼女がさっきまで溜めていた魔力が渦となって彼女を取り囲んでいく。
赤いローブを身に纏い…
そして木でできた大きな杖を、魔王目掛けて構える。
そして…
「エクスプローア!!!!」
彼女が、そう唱えた。
『大魔法使い』と呼ばれる彼女…
そしてそんな呼び名にふさわしい、魔力のこもった赤い魔法が…
魔王の放つ光線の横を過ぎて、魔王へと向かっていく。
俺もその瞬間…
赤い魔法とは反対側から、魔王目掛けて駆ける。
そしてすぐ…
ばこぉぉぉぉぉぉん!!!
そんな爆発音が音が響き…
空気中のすべての元素が振動し…。
そして土埃が舞う。
だけど俺は構わず、魔王へと飛び掛かった。
魔法による煙が晴れていき、視界が鮮明になっていく。
すると、魔王の姿が見えた。
身長は2メートルを優に超え…
胸は厚く、ガタイが良い。
そして頭からは角を生やし、黒い衣装を身に纏っている。
そしてどうやら…
魔王は今、光線を放つのを止め…
舞った土埃を、鬱陶しそうに払っている。
それはただ鬱陶しいのか…
それとも、灰色で彩られた視界をどうにかするためか…
もしかしたら、他の何かかもしれない。
ただ、それは一隅のチャンスで…
そして、最後のチャンスだった。
だから俺は…
重力によって落ちていく勢いそのままで、魔王の元へと向かい…
そして魔王との距離がほぼゼロ距離になった瞬間…
俺は聖なる力の込められた剣を、魔王目掛けて振り下ろした。
振り下ろした瞬間…
俺の剣から、白く眩い光が放たれ…
それがまるで斬撃の様な薄く鋭い形で、魔王へと向かう。
ただ魔王もそれに気づき、手で跳ねのけようと試みてくる。
ただそんな試みを無駄にして…
光の斬撃が、魔王の腕…
そして胴体へと届く。
「馬鹿な…
こんな…
こんなはずが…」
魔王から後悔に満ちた、絶望した声…
そして、絶望した表情を向けてくる。
ただそんな魔王をお構いなしで、光の斬撃が魔王の身体を真っ二つにしていく。
きっと、魔王は自分の最期を悟ってしまったのだろう。
だから最後、魔王は…
「くそぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!
覚えておれ…、覚えているのじゃー!!!」
悔しそうな声…
そして言葉を言い残した。
光の斬撃が通り過ぎた後、さっきまで魔王だったものが消滅していく。
完全に勝利だった。
その光景を目にして…
自分の責務を何とか成し遂げることができたという、安堵感…
そして、ようやく魔王を倒すことができたという達成感が心に湧いてきた。
「終わった…
よくやく、終わったんだ!!!」
俺は灰のように消え去って行く魔王だったものを見つめながら、そう言葉を…
心の重荷を吐き出した。
両の手に、握りこぶしを作る。
そして、それをさらに強く握った。
ただ忘れてはいけないのが、この所業を成し遂げることができたののは仲間がいたからだ。
俺はすぐに、皆の元へと戻る。
すると…
アイラからは…
「やったわね。」
ガネルから…
「やったな。」
そしてミアから…
「やり遂げましたわね。」
そう声がかけられる。
それが嬉しくてたまらない。
「あぁ…
本当に…、本当に…
皆も、ここまでありがと…」
感極まって、目頭が熱くなった。
そして俺は、手を…
拳を、皆に向かって突き出す。
するとそれを見た三人ともが、その俺の拳に向かって自分たちの拳を突き出し…
四人で、拳を合わせた。
こうして、魔王討伐が終わり…
俺の最後の戦いが終わりを迎えた。
そして人間領へと帰ろうと思い、なんとなく最後魔王がいたこの部屋を見返した時…
魔王が消えた付近の場所に、赤い色の宝石がついたネックレスがあった。
拾ってみると…
色はきれいな紅…
奥までもずっと、透き通った紅が見通せる。
それはほんときれいで…
だから俺は、それを戦利品として持って帰ることにした。
二週間後…
俺たちは魔族の住処であった魔王領を立ち去り、王都に…
それも、国王の謁見の間にいた。
そして…
アイラ、ガネル、ミアの順で…
魔塔王、ギルド長、神父様から褒美と、三人が求めた新しい役職が与えられていく。
役職で言うと…
アイラが、魔法の研究組織である魔塔…
そこの、責任者の一人…
魔塔主に。
ガネルは、冒険者ギルドの重役。
魔王を倒しはしたが、未だにこの世界では魔物が蔓延っている。
ただ、その存在は人にとって不幸を被らせてくるだけの存在ではなく…
魔物から得られる素材や魔石から、人間という種族にとっては相当の価値がある。
だからその存在を狩ることで生計を立てられる冒険者という職業は、まだまだ一定の人気と需要があり…
そしてその冒険者という輩たちを取り扱う組織…
冒険者ギルドに、ガネルは重役として身を置くようだ。
ミアは、聖女という称号の通り…
聖和教…
世界中の人類の平和と安定を願う、宗教団体…
そこで、神格的存在として崇められる存在になるらしい。
俺は三人の拝命されていく姿を見ながら、ここまでの長い道のりを思い出していた。
日本で生まれ、そこで普通の暮らしをし…
そして高校生…
16歳という歳で死んでしまったこと。
そしてこの世界では、ただの農家の家に生まれたこと。
7歳のとき…
神から与えられるというスキルで、勇者という名前のスキルを授けられたこと。
そしてすぐに王都へと連れて行かれ…
とある侯爵家に養子として引き取られ、14歳までの7年間、侯爵家でお世話になったこと。
そしてそこの…
侯爵家のおっかないおっさんから、立派な騎士になるためにと、毎日しごかれたこと。
修行が一段落したらすぐに、魔王討伐に向かわされたこと…
魔王討伐までに、3年の月日がかかり…
その道中で三人の仲間が増え、また別れがあり…
そして17歳になった今年…
ようやく人類の悲願、魔王討伐を果たせたこと。
ほんと…
ほんと、長くて苦しかった。
特に苦しかったのは…
魔王討伐…
ではなく、修行の7年間だ。
毎日毎日、剣の稽古に筋トレ、そして永遠とランニング…
地獄だった。
本当に地獄だった。
今時、うさぎ跳びって何…
もう時代錯誤過ぎるだろ…
なのに…
あのクソ親父…
あのクソ親父は…
思い出してきただけで、腹が立ってきた。
あっ、ちなみにここのクソ親父というのは…
この国には近衛騎士という、国王様直属の騎士という立場があって…
そしてそのクソ親父は、今はその騎士の立場を引退して後進を育てる道を進んだ外道のことだ。
しかもついでに、国王様とは幼馴染らしい。
もうそいつの教育方針ときたら…
もう、魔王討伐へ向かう三年間の旅の方が幸せに思えたほどだ。
生活水準は、かなり低かったはずなのに…
おかしい…
ほんとおかしい…
そしてそいつは今…
この、国王との謁見の間はかなり広く…
具体的に言うと、体育館くらい…
数値で表すなら、縦が30メートル、横は20メートルだろうか…
その空間の中に各組織、貴族のお偉いさんたちが集められ…
そしてそのクソ親父は、端の方で涙を流している。
その姿を見ると、嫌な過去を思い出すと同時に…
なんか素直に憎めなくもあって、なんとも言えない気持ちになってしまう。
そしてそんなことを想っている間に三人の拝命が終わって、どうやら俺の番が来るみたいだ。
「勇者フェデ、前に!!!」
一人の騎士が、そう声に出してきた。
俺は教えられた通りに礼を持って国王の前へと向かい、そして膝をついた。
そして、ふっくらとしている国王から…
「勇者フェデ、この度の所業、誠にご苦労であった。」
「はっ!!」
「して、お主が成し遂げた偉業に何か褒美を授けようと思うが、何がいい?」
国王様からのこの質問…
体裁上は、俺の自由意志によって決めて良いとされている。
ただ本当は、国王様とクソ親父が事前に話し合いで決めていたらしく…
だから前日の昨日…
「フェデ、先日国王様と話し合って、お前は近衛騎士になることになった。だから明日、国王様からの問に、自分は近衛騎士になりたいと答えなさい。」
そうクソ親父から言われた。
もう笑うしかなかった。
俺の自由意志とは一体…
ただこれは、国王様も絡んでいる話…
だから、嫌だなんて言えない。
だから俺はしょうがなく、答えを口にした。
「お金…
とにかくたくさんのお金を…
俺に平穏をください。」
「「「「「へっ…?」」」」」
国王…
そして集まったお偉いさんたちから、驚きの声が上がった。
でも知らん。
そんなの知らん。
礼とかも知らん。
そんなのよりも、平穏を…
俺に、平穏を下さい。
ただ、こんなわがままがすんなり通ることはないらしく…
「こ、国王様!!」
すごく聞き憶えのある、今聞きたくないおっさんの声が近づいてきた。
うわっ…
やっぱ来たよ…
「ど、どうした…?フェルグラント侯爵…」
戸惑いの言葉…
そしてクソ親父の名前が、国王の口から出てくる。
そんなクソ親父は、俺とは少し遠くに地面に膝をついてから…
「このような崇高な場でのご無礼をお許しください。」
「よい、話せ!」
「はっ。
この馬鹿息子はまだ若く、自分がどの道に進むべきかちゃんと理解していないようです。」
「!!! そうだな!!!
なら、フェルグラント侯爵は、勇者はどのような道を進むべきだと思うか?」
国王はそう言いながら、口元と表情を微かに緩めた。
なんだろう…
すごく嫌な…
まるで俺に悟られないよう…
こっそりと既定の路線に戻そうとしているような、か細いながらも嫌な雰囲気を感じる。
「それは…」
クソ親父は一度だけ俺に視線を向けた後、また頭を下げて…
「国王直属の近衛騎士。それ以外には…
「嫌です。」
「「へっ…?」」
俺が、急に会話に入ったせいか…
それとも、自分たちの策略がまた崩れそうになったせいか…
国王とクソ親父から抜けたような声が聞こえた。
でもそんなのは知らん。
「もう一度言います。嫌です。」
「ぐっ…。フェデ、何を血迷ったことを…
お前は…
お前は私の後を継ぐ、近衛騎士一番隊隊長になるんだろ。」
「いえ、遠慮しときます。」
「何故だ…?何故なんだ…?」
何故…?
そんなの…
「疲れたんだよ。もう疲れたんだよ。俺は!!!
来る日も来る日も走らされて…
で、終わったと思ったら魔王討伐…?しかもその後は近衛騎士…?
ふざんけんな!!!
休みを…
俺に休みをくれ。永久に!!!!」
俺がそう言い放つと、クソ親父は…
ぽかーんと、目が鳩のようになった。
でもすぐに、いつも通りの顔に戻って…
「ダメだ。そんな腑抜けたことなど許さん!!!」
「うるせぇわ、クソ親父!」
「クソ親父っ!?」
俺の言葉に、クソ親父は目を大きく見開かせ…
そしてそんな驚いた声を上げた後、すぐ…
「いつも私のことは、”ダディ”と呼べと言ってるだろうが!!!」
「うるせぇわ、ダディ!!」
「ふむ、ならよし。」
「いや、良くはないだろ…」
国王直々に、冷静なツッコみを入れてきた。
それで、ダディも我に返ったみたいで…
「た、確かに…。確かにそうですね。」
そう納得の言葉を漏らす。
そしてまたすぐ…
「そもそも、近衛騎士の何が嫌なんだ!!!」
嫌な理由…
そんなのさっきからずっと言ってる通り…
「疲れたんだよ。もう疲れたんだ、俺は…
なのに、近衛騎士って…
嫌だよ。絶対しんどいじゃん!!」
「そんなの当り前だ!!だからやりがいがあるんだろうが!!!」
くっ…
このダディ、なかなか降りてくれない…
だけど俺もそう簡単に降りる気はない。
だってかかっているからね、俺の今後の人生が…
「そもそも、今はオリ―ヴェさんが一番隊隊長じゃん。だからいいじゃんそれで…
彼女、しっかり者だし…」
俺がそう言って…
国王をすぐそばで警護している騎士を見つめると、ちょっと照れているその彼女と目が合った。
そしてすぐダディに向き直ると、ダディとも目が合った。
「ダメだダメだ。あんな軟弱もの!!
私はあんな小娘、私の後継者とは認めておらん!!!」
「へっ…?」
「「はっ…?」」
何故かオリ―ヴェさんへと飛び火し、彼女からは抜けた声…
そして俺と国王から、びっくりした声が上がった。
そしてオリ―ヴェさんは、シュンと悲しそうに下を向いて…
俺は呆気に取られたまま…
だからダディのその言葉に、国王が理由を聞いた。
「何故だ?フェルグラント侯爵…」
その問いに対して、ダディは顔をしかめてから…
「そんなの、女だからですよ!!!」
「「「へっ…?」」」
「私の時代まで続いた偉大なる歴史を、あその女が…、あその女が!!!」
ダディが、より忌々しそうにオリ―ヴェさんを睨みつける。
そしてその視線に、オリ―ヴェさんが顔を歪め…
国王が、ため息をつく。
やっぱり時代錯誤なんだよ、この親父は…
うさぎ跳びと言い…
別にいいじゃん、女性でも…
彼女の剣の才覚は確かなんだし…
すると国王が…
頭痛にでも頭を悩ませるかのように額に手を当て、そして俺の方に視線を向けてきた。
「もうよい。儂は疲れた。
勇者フェデ、お主のことであるのだから、もうお主自身にに任せよう。お主はどうしたい?」
よし、よし、よし!!!
「国王様!?」
クソ親父から、まだそんな声が上がる。
ただ、こうなってしまってはもうどうにもできまい。
だから俺は国王の言葉に笑みを浮かべながら…
「ありがとうございます。そして先ほどもいた通り…」
俺のこの文句に…
クソ親父顔は歪め、国王はより疲れた顔になる。
悪いとは思う。
でも許して欲しい。
「生涯苦労しないだけのお金、それと自由を、俺にください。」
「はぁ…。分かった。」
国王様は重力に抗えず頭落として、渋々了承をくれた。
よし、よし、よーし!!!
これで…
これでようやく、俺に平穏な日々が…
俺は、国王様の返答に喜ぶ。
だけどまだ何か、国王様からあるらしく…
「ただ、魔王が死んだからといって、まだこの国に完全な平穏は訪れてはおらん。
隣国とのいざこざの火ぶたはあちらこちらにあり、そして、魔王領だった領域には、まだ強い魔物が溢れるほどおる。だから、そんな魔物のから国を、民を護って欲しいのだ。」
な、なるほど…
「具体的には何を…?」
俺がそう尋ねると、国王様はニカッと笑みを浮かべてから…
「なに、簡単なことだ。この国で魔王領に最も近い、具体的な名を出すと、フワロス領付近で居を構えて欲しいのだ。」
魔王領の近く…
ふむ…
やばい魔物が来たら、頼むからやっつけてくれということか…
なるほど…
う~ん、でも…
強い魔物がいる地の近く…
それは普通にめんどくさくはある。
でも国王様もかなり譲歩してくれたみたいで…
あと、お世話になった国…
それに民という言葉を出せると断れないなぁ。
まぁ…
お強い冒険者で倒せない強い魔物なんてもうそんなにいないだろうし、それくらいなら別にいいかな。
結論は出た。
だから俺は、国王様へと礼を持った姿勢で視線を向ける。
するとすぐに、にやけた国王様と視線が合って…
してやられたのか…
まぁでも、いっか。
「はい、国王様のその願い、勇者フェデが承りました。」
俺は今まで何度も口にしてきた言葉…
そして今後、もうそう多くは使わないであろう言葉を、国王様へと向けた。
すると…
「はぁ…
ほんとこやつは、自分に都合が良い時だけ…」
国王様からため息と、そして何かぶつぶつと小さい声が聞こえた。
ただ俺には、国王様が何を言ったか聞き取ることができなかった。
だから不思議な気持ちで国王様を見つめていると、国王様は威厳のある態度で俺へと視線を向けてくる。
「あぁ、助かる。」
こうして、謁見は終わりを…
終わりを…
「国王様ぁぁあああ。
私は、私はまだ…」
まだ、クソ親父が諦めていないようだ。
彼が叫んで抗う。
だけど…
「フェルグラント侯爵!!!」
「は、はい…」
国王様が、威を含んだ声を発し…
そんな国王様を、クソ親父は額に汗を流しながら見つめる。
そして…
「お主は後で説教な。」
「へっ…?」
「だから、後で儂の書斎の間まで来い。」
「はっ…!?何故ですか?」
「お主がこの神聖なる場で吐き出した、数々の不適切な言動でだ。」
「ぐ…。フェデは…
どうして…
どうしてフェデは不問にして、私だけなんですか!!!」
「魔王を倒した勇者に、誰が説教などできるものか…。とにかく、儂はしたくない。でもお主は別だ。だからあとで来い。」
「ぐっ、嫌だ…。それだけは嫌だぁぁぁぁぁああああ!!!!」
クソ親父の往生際の悪い悲鳴が、部屋中に響く。
だけど…
「ほんとこいつはうるせぇな…
もうよい。オリーヴェ、この者を牢に閉じ込めておけ。」
「はっ。」
国王の言葉にオリーヴェさんは返事をした後、クソ親父に歩み寄る。
そんな彼女に対して、クソ親父は見下したように言葉を放つ。
「ははは…
お前ごとき軟弱者に、この私を連れて行くことなど、できるも…
グワォ…
そ、そんな馬鹿な…」
ガクッ…
クソ親父が言葉を言い切るその前に、クソ親父はオリーヴェさんによって気絶させられてしまった。
そしてクソ親父は、彼女に肩から担がれて何処かへと…
きっと牢屋へと連れて行かれてしまった。
こうして謁見は無事終わり…
俺は、自由を手に入れた。
あーあ…
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