まとめ
幾つかの技をかいつまんで紹介して参りましたが、単純化すると以下のようにカテゴライズすることが出来ます。
A: 〘斬撃〙で始めて、〘巻取り〙で優位を確保し、〘斬撃〙で仕留める
――③〘剥ぎ取り〙、④〘啄む刃〙
B: 〘斬撃〙で始めて、〘巻取り〙で優位を確保し、〘刺突〙で仕留める
――⑤〘驚撃〙
C: 〘斬撃〙で始めて、〘巻取り〙で優位を確保し、〘格闘〙で仕留める
――⑥〘走抜〙
Cについては本稿では〘巻取り〙を挟まないパターンの〘走抜〙を紹介しましたが、〘巻取り〙を使うパターンも存在しています。
いずれにせよ、こうしてみると紹介した技の数々は「〘斬撃〙で始めて、〘巻取り〙で優位を確保する」ところは全て共通していると言えます。これはメッサー剣術を含む、中世ドイツ剣術の特徴です。
「全て〘斬撃〙で始まる」ところだけに着目すれば、「西洋剣は叩き斬るもの」だと論じることも不可能ではないでしょう。しかしここまで読み進めた諸賢は、〘斬撃〙のあとに〘巻取り〙が続くことを知っているはずです。相手の剣を絡め、操作する技法です。
そして最初の〘斬撃〙にしても、
「どう打ち込めば次の技に繋げられるか(③〘怒りの斬撃 - 突〙参照)」
「どう打ち込めば〘先手〙を取れるか(⑤〘驚撃〙参照)」
これらを気に掛けながら放つものだ――すなわち何も考えずに力任せに攻撃するのではなく、整然とした理屈・哲学に基づいて攻撃するのだ、ということも見てきました。
これらを鑑みるに、『西洋剣は叩き斬るものではない』。そこには技術があり、確かに書物として残す価値があった――そう判断することは難しくないように思えます。
勿論、私は趣味でロングソード術やメッサー術をやっているような人間なので、中立的な判断を下しがたいのも事実です。そして判断は読者諸賢、個々人が下すべきものでもあります。なので1つだけ問いを投げかけて、本稿を締めようと思います。
「西洋剣は叩き斬るもの」でしたか?
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