第18話 新たな脅威
凛が巫女からの力を受け継ぎ、町の守護者としての役割を決意してから数日が経った。彼女はかつめしが持つ「癒しと調和」の力を正しく使い、町の人々の心を守ることが自らの使命であると感じていた。しかし、凛が調査室で静かに町の様子を見守っていると、何か不穏な気配を感じ始めた。
ある夜、町の外れにある古びた神社の境内で、ひときわ異様な光が立ち上がったとの噂が舞い込んできた。地元の住民たちは誰も近づこうとせず、不気味なものを感じているようだった。凛はその神社に向かうことを決意し、夜の静寂を破るように歩みを進めた。
神社にたどり着くと、境内には異様な光が漂い、薄暗い紫色の霧が辺りを包み込んでいた。霧はひんやりとした冷気を含み、触れると不安が増すような感覚が凛を襲った。その中央には、影のようなものが集まり、何かを召喚しようとする儀式の痕跡が残されている。
凛は直感的に、これは教団や新たな敵が引き起こしたものではなく、もっと古く深い力が動き出していることを感じた。彼女は慎重に周囲を調べ、手がかりを探していると、境内の片隅に古びた石の彫刻を見つけた。彫刻には見慣れない文字が刻まれており、それがかつての儀式を司った者たちの記録であることに気づいた。
その文字を読み解くと、驚くべき事実が明らかになった。かつてこの地には、「影の精霊」と呼ばれる存在が封じられており、その精霊は人々の心の闇に触れ、力を得ていたという。そして、儀式に使われていた「かつめし」は、この精霊を鎮め、町に調和をもたらすためのものであった。しかし、精霊がその力を利用されることを嫌い、長い間、力を封じられていたのだ。
「つまり、影の精霊は再び力を取り戻そうとしている…?」
そのとき、霧の中から低い声が響いた。「そうだ、人間よ。私はお前たちが恐れる“影”そのものだ。長き眠りの中で忘れ去られたが、今こそ復活する時が来た」
凛は声に向かって力強く答えた。「あなたがどれほどの力を持っていようと、私は町を守る。再び人々を影で苦しめることはさせない!」
霧の中から、闇に包まれた影の精霊が現れ、その姿は一瞬ごとに形を変えながら、不気味な笑みを浮かべている。「お前ごときに、私の力が止められると思うのか?私は人々の恐れや苦しみから力を得ている。そして、お前がいくら頑張ろうとも、闇は消えない」
凛は拳を握りしめ、構えを取った。精霊は鋭い手を伸ばし、影の刃のように襲いかかってきたが、凛はカンフーの動きでその攻撃をかわし、逆に精霊の体に打撃を与えた。しかし、影の精霊は衝撃を受けてもすぐに形を変え、さらに強力な力で攻撃を仕掛けてくる。
「私は影だ。どんなにお前が闇を払おうとも、決して消え去ることはない!」
凛は精霊の言葉に動揺しそうになったが、心の中で巫女の力を感じ取り、冷静さを取り戻した。影を消すことはできなくても、人々の心に希望をもたらすことで精霊の力を抑えることができるかもしれないと悟った。
凛は深く息を吸い込み、心の奥から巫女の力を呼び起こした。彼女が放つ光は、周囲の霧を和らげ、影の精霊の力を弱める効果を持っていた。
「私はこの町と人々を守るために、巫女から力を受け継いだ。あなたの影がどれほど強くても、私は決して負けない!」
凛の言葉と共に、彼女の体から光が溢れ出し、影の精霊を取り囲むように広がっていった。精霊は苦しそうに声をあげ、闇の力が薄れていくのを感じているようだった。
「なぜだ…なぜ人間ごときが私の力に抗えるのだ…」
凛は静かに答えた。「あなたは人々の恐れや苦しみから力を得ているけれど、私には町の平和を守るための強い意志がある。それがある限り、あなたの影は私に届かない」
精霊は次第に消えかけ、薄くなりながら言った。「だが、いずれまた、影は訪れる。人々が心に恐れを抱き、闇に囚われる限り、私は消えない」
そして、精霊の姿はついに完全に霧散し、夜の闇へと消え去った。境内には静寂が戻り、紫色の霧も消え失せていた。
凛は深く息を整え、再び静かな夜に包まれた神社を見渡した。影の精霊は消えたものの、彼の言葉は彼女の心に残り続けていた。影は完全に消え去ることはなく、人々が恐れや苦しみを抱く限り、またいつか現れるかもしれない。それでも、凛には強い決意があった。
「私はこの町の守護者として、闇に立ち向かい続ける。たとえどれだけの影が訪れようとも」
彼女は静かに神社を後にし、加古川の町へと帰路についた。凛の心には、新たな力と決意が灯り、この先どんな脅威が訪れようとも、町と人々を守るために戦い続ける覚悟が揺るぎないものとなっていた。
町の夜は再び静けさに包まれ、彼女の中で燃え上がる守護の炎が、これからも町を照らし続けるのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます