追放魔族の成り上がり! ~領民を守る為に貴族の息子を殴ったらやりすぎだと追放されたので、魔王になってクソ親父を見返してやる!~

レイン=オール

1部 追放

第1話

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◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇





「バルド様ー! いつも見回りしてくれてありがとう!」

「バルド様! よければウチの野菜貰ってください!」

「バルド様見て! 貴方の新しい人形を作ったんです!」


「「「バルド様!!!」」」

「おう! 今は見回り中だから、また後でな!」


 いつもの日課として街中を見守っていた時の事。


 俺を見つけた途端、クォドネリアの民たちが声を掛けてきた。

 それぞれが思い思い自由に言葉を投げ掛けてくる。


「まったく。一斉に話し掛けられたら対応し切れないっつーのに」


 無邪気に慕ってくる街の連中を見て、俺は思わず苦笑いした。

 我ながら随分とこいつらに好かれちまったもんだな……、と。


 遠い昔、ガキの頃はそうでもなかった。

 俺がまだ責任感のないクソガキだった頃は。


 俺は一級子爵の父、クォドネル=パウェ・ドゥールの下に生まれた。


 父、クォドネルは偉大な男だった。魔界『ドゥール岩山要塞』と首都『クォドネリア』を治め、角付きである俺達魔族と輪っか付きである聖族どもとの戦争では、100以上もの輪っか付き貴族どもの首級を上げた魔族の中の英雄。

 あまり戦争に出なくなった今も、魔族の中に親父を慕う連中は多い。


 ただ――子である俺には、親父の名は呪いでしかなかった。


『あなたは英雄であるお父様の跡を継ぐのよ!』

『あの方の血を引いているのです。貴方には出来るはずですよ』

『彼の人の後継たる貴様が、こんな様でどうする!?』


 親父、親父、親父、親父、親父。


 何処に居ても、誰と居ても。


 周囲の人間は俺を親父の息子として見た。

 親父の息子としてしか、見ようとしなかった。


 誰一人、俺を見てはいなかった。


『親父の跡を継ぐ? それに何の意味があんだよ。くだらねえ』


 ――ので、当然のように俺はグレた。


 これまでは素直に受けてた当主教育をすべてサボるようになったし、治安の悪い場所に出向いてチンピラと喧嘩したり、時には首都の外に出て一人でモンスターと戦ってみたりもした。ドゥール家の屋敷に戻る事など、年に1,2回あればいい方だ。


 もちろん、周囲の人間は俺に愛想をつかした。


 母親は露骨に居ない者扱いしてきたし、文官長は会話こそするものの極めて事務的な態度しか取らなくなり、軍団長はゴミを見る目で見てくるようになった。


 とはいえ、当時の俺はむしろ清々していた。

 無理矢理背負わされていた重荷が消えたんだからな。


 それからは余計屋敷に近付かなくなり、あいつらも俺に関わるのをやめた。


 ――転機が訪れたのはある日の事。


 クォドネリアにモンスターが襲撃を仕掛けてきた。

 それもただのモンスターではなく、地竜の大群だ。


 街は阿鼻叫喚に陥った。至る所で建物が破壊され、民衆が襲われている。

 兵士は出張っていたが数が足りなかった。地竜はただでさえ厄介なモンスターだというのに、それが群れで襲ってきたのだ。倒しても倒しても次々と湧き出る敵に兵士たちは戦意喪失し、疲弊も重なって徐々に均衡が崩れつつあった。


 地獄へと変わった街で俺がその少女を救ったのは偶然だった。


 クォドネリアを歩く最中、地竜に襲われる少女を見つけたから救った。子供を見捨てるのは後味が悪いから。それ以上の意味などない、ただの気紛れでの行動だ。


 ただ……助けた少女にその時言われたのだ。

「助けてくれてありがとう、バルド様!」と。

 その少女の目は、しっかり俺を捉えていた。


 初めてだった。何かをしてお礼なんて言われたのは。

 初めてだった。俺自身を見て言葉を掛けてくれた奴は。


 結局、地竜の襲撃は親父によって解決された。


 あの少女が助けた後どうなったのかは分からない。

 無事に生き残れたのか、それとも別の地竜に襲われたか。

 少なくとも俺がもう一度会う事だけはなかった。


 あの少女に出会ってから考えるようになった。


 あの時死んだ連中の中には、あの少女みたい奴もいたんじゃないか。

 あいつみたいに正面から俺を見てくれる奴がいるんじゃないか、と。


 それ以来、俺は街の連中をたびたび助けている。


 困っている奴がいれば手を貸して、悪党に襲われている奴がいれば助け、悩みに囚われている奴がいれば声を掛け、難題に取り組む奴がいれば共に頭を捻ってやる。


 そうすりゃ俺を見てくれる奴も増えるからな。


 おかげで随分と街の治安はよくなったと思う。

 街の連中にも好かれ、声を掛けられる事が増えた。


 まあそのぶん面倒な事も増えたが、辞めたいとは思わない。

 街の連中を助ける事にやりがいを感じていたからな。


「まあ、相変わらず親父の信奉者連中には嫌われてるが……」


 あいつら、未だに俺が親父の跡を継ぐ気でいると思ってるからな。

 街の連中を助けるのはその正当性を確保する為だと考えてるんだ。


 ……そんな訳がねえだろうに。少し考えれば分かるだろう?


 もし俺が将来貴族になるとしても間違いなくここじゃねえよ。

 親父の信奉者が蔓延ってる魔界なんざ誰が継ぐかってんだ。こんなクソッたれな魔界を継ぐくらいなら、何処か適当な野良魔界を奪う方がよっぽどいいっての。


「さて、と。どうでもいい事は忘れて、見回りの続きするか」


 くだらない思考を振り払って、俺は街の見回りを再開した。

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