序章 美味な夕食、おいしくないお仕事中
小ぢんまりとした食堂には、五人も座ればいっぱいになってしまう丸テーブルが一つ。夜七時、
真っ白なテーブルクロスの上には今夜の夕食──ローストした
黒い簡素なワンピースを着た少女は、そんな料理を目の前に、お
「では、いただきます」
少女は銀のフォークとナイフを取り上げ、肉の
思わず『はうーん』と声が出てしまいそうになる。
「こ、これはパセリのさわやかさをベースに、バジルをきかせて、さらには
「ほう。付け合わせは」
少女はシャトー切りにしたニンジンをナイフで少し切って、パクリと口に入れた。
「これは単なるグラッセかと思ったら、ほんのり苦みのある甘さが……カラメリゼしてあります。こんなニンジンの食べ方があるなんて!」
「ほら、水も」
青年が足つきグラスをすっと少女の口に押し付けてくる。
「あ、すみません……」
一口飲ませてもらって口の中を
「これは──」と、少女が感激のコメントをしようとしたところ、隣からイライラした空気が漂ってきていることに気づいた。
「コレット、お前は美食家か? それとも料理評論家か?」
コレットが
ぎゃ、またやってしまった……!!
「あたしはあなた様のお毒見役でございます。おいしい……じゃなかった、毒は入っておりません」
言いながら、毒見の終わったお皿をおずおずと隣の席に移動させた。
コレットは回復
まさか、こんな裏仕事をするハメになるとは……。
コレットはがっくりと
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