第44話 公開プロポーズって、そもそも前回も家族の前でやったよな……まぁエフィは可愛いからもう一回プロポーズする件

そうしてアルス新国王とアリアは婚約し、夏前に結婚することが発表された。

反対者は俺しかいない。

俺は政権の中にはいない。


つまり満場一致で決定しやがった。


こうなってしまっては、もう仕方ない。

俺とエフィの婚約も発表するしかない。


そうしないと、俺たち2人に対して大量の姿絵が送られてくることになってしまう。

そんなことになる前に婚約発表するしかない。


そうやって父さんとミトラ様を説得し、そのまま発表した。


まず、エフィがエルダーウィズ公爵の養子だったこと。これは世間を驚かせたらしい。だったら誰の子だったんだ?となった。

当然だ。事件が起きなければ王妃になっていたものが、どこぞの馬の骨とも知らぬ娘だったら風聞は悪いだろう。


しかし、彼女が"魔女"の娘だということで、むしろ誰も批判的な言葉を上げなかった。

それほどまでに"魔女"は畏れられていたし、エルダーウィズ公爵家の出身であることは知られていたし、前国王が魔女の血を王家に入れようとしたのであれば理解できると言った論調で話がなされている。


そして俺との結婚。これも批判は少なかった。

むしろホッとした貴族が多かったようだ。


なにせエルダーウィズ公爵家の力が強まりすぎている。

現公爵は大臣であり、末の妹は未来の王妃だ。

そこに例えば、別派閥の長の娘などが俺の嫁を送り込んだりしたら、もう誰も逆らえなくなる。


なのにアザレン侯爵家は俺にメアリーを薦めてくるんじゃない。

本人は知らないんだろうけど、もし知ったら震えあがるぜ?


そんなこんなで、俺は無事エフィと公式に婚約した。

新国王が喜んで書類にサインをくれたので、つつがなく成立した。



俺は改めてエフィにプロポーズした。


「エフィ。俺はずっと君のことが好きだった。君を支え続けたいと思って生きて来た。これからもずっと一緒にいて欲しい」

「はい……お兄様……いえ、クラム様。私こそ、クラム様を支えます。これからもずっと一緒にいさせてください」


たぶん、こんなことを言い合ったと思う。

幸せすぎて……そして、恥ずかしさと、嬉しさと、長年抱えた感情が爆発してもう何を言ったか覚えていない。


その後、ただただ抱きしめてキスして顔を見て恥ずかしくなってキスして抱っこしてやったぜって叫んでもう一回キスした。

それから、父さんとミトラ様とアリアに見られていたのを思い出したから見せつけるようにもう一回キスしてからエフィを離した。


「このバカ! なんで最後にもう一回キスなのよ! エフィが真っ赤になって立てなくなったじゃない」

「だって見られてたから」

「なんで見られてたら見せつけるのか、議論が必要なんじゃないでしょうか?」

俺たちに当てられたのか、少し顔を赤くしたミトラ様が父さんの腕を取りながら可愛らしく文句を言っている。


「まったく、バカップルばっかりね、うちは!」

「羨ましければお前もアルス新国王としてくればいいだろ?」

「ばっ、バカじゃないの! そんなことできるわけないでしょ!? 相手は国王様よ!」

案外こいつはうぶなのかもしれない。


生意気なコイツがこんな感じで焦るのが新鮮だった。


「そんなの関係ないだろ。寝室に入ればただの男と女だ。ちゃんとリードしてやれよ? アルス新国王は恥ずかしがり屋に間違いないから」

「えっと、アルス様は結構積極的で……」

「ほう……」

「待って! 今のなし! なしよ! このバカ!!!」

つつくのが面白かった。

アリアは魔法も得意じゃないし、力も強くないから、叩かれても蹴られても痛くない。むしろ面白い。

これは……。


「クラム様……ほどほどに」

遊ぶ気満々だったのにエフィに咎められた。

相変わらず可愛いし優しいな。


エフィは普段は研究の邪魔になるからと後ろで髪を縛っていることが多いが、今はナチュラルに流している。メイドさんたちがしっかりセットしてくれたんだろうが、めちゃくちゃ俺好みで可愛い。


その髪を優しくなで、ビクッとしてこっちに顔を向けたエフィにまたキスをする。


「このバカップル!」



そして今、俺たちは2人でソファーで休んでいる。


「エフィ、君は俺を支えてくれると言ったが、俺としては魔法や魔道具の研究を続けてくれたらと思っている」

「おにい……クラム様。よろしいのですか?」


慣れてなくてお兄様って呼びそうになるエフィが可愛い。


「もともとそのつもりだからな。だから領地のことも、家のことも、うちの騎士団のこともそれぞれ任せられるやつを育成してる。君とヴェルト教授さえよければうちに来てもらってもいいし、そのまま学院で研究して実用化するための組織をうちで作ってもいい」

「ありがとうございます。とっても嬉しいです。魔法が楽しくて……」

「うんうん。君が集中している顔が好きなんだ。それから上手くいってにっこりする顔も」

「えっ」

「あぁ、ごめん。失言ではないけど、まぁなんだ。ちょっと酔ってるってことで許してくれ」

「もう……。恥ずかしいです。でも嬉しいです」

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