第45話 結婚式でバカップルっぷりを披露してやった件
時は過ぎて、暑さも落ち着いてきたとある晴れやかな日……。
「汝、クラムロード・ギレウス・フォン・エルダーウィズは、今日の善き日に妻となる娘、エフィレシア・レニアス・フォン・エルダーウィズを終生変わることなく愛することを誓いますか?」
「はい。誓います」
「汝、エフィレシア・レニアス・フォン・エルダーウィズは、今日の善き日に夫となる者、クラムロード・ギレウス・フォン・エルダーウィズを終生変わることなく愛することを誓いますか?」
「はい。誓います」
集まってくれた人々の前で、荘厳な雰囲気を醸し出す神父様の言葉に応え、俺とエフィは互いを愛し続けることを誓った。
ちなみにわかると思うけど、長ったらしい名前は俺とエフィだぞ?
ようやく結婚した。
神父様に向かって並んでいる俺たちだが、一刻も早く終わらせてエフィのドレス姿を堪能して脳に焼き付けて魔道具で姿絵を作って遺したい。
それを寝室に飾る用と、持ち歩く用と、俺専用の馬車に貼る用とそれぞれの予備に合計6枚作るんだ。
えっと、愛が重いとか言うなよ?
ようやく成就したこの想い。結婚したのが嬉しいんだから、許してほしい。
きっとエフィは恥ずかしがるけど、その顔だってきっと気絶するくらいに可愛いんだから。
そしたらその顔も魔道具で姿絵を作って……。あぁ……。
「クラム様。クラム様?」
いかんいかん。式の途中だった。
「申し訳ない。新婦のあまりの美しさに意識が飛んでいました」
鳴り響く笑い声。
「いちゃつくのは式が終わって2人っきりになってからにしてよね! まったくもう」
なんて娘気分で文句を言っているのは末の妹アリアだ。
すでに新国王と結婚を済ませており、王妃となっているが、まだまだ子供だ。
「私としましては、この正式な場で崩れている王妃様の態度に驚きを禁じえず……」
「うるさいわよ! 主に親族だけなんだからいいでしょ!」
笑い声に恥ずかしくなったのか勢いを失っていくアリアがアルス国王によって引き戻され、つい俺も笑ってしまった。
隣を見ると、同じく笑顔のエフィがいた。
「ごほん。ではよろしいかな? それでは指輪の交換に移ります」
「「はい」」
俺たちと同じくアリアの様子を見て笑っていた神父様が再び威厳を取り戻し、厳かな口調で式を進行する。
その合図に従って、俺とエフィ、それぞれの従者役となった親戚の子供が指輪を持ってきてくれた。
これは、みんなわかると思うが、魔道具だ。
お互いが魔力を込めた守護の指輪だ。
ヴェルト教授が血の涙を流しながら作ってくれた魔法を込められる指輪に、俺たちがそれぞれ魔力を込めた。
エフィがどんな魔法を込めたのかは知らない。
でも、俺は可能な限り全力で実行した。
仮に魔狼が寝込みを襲ってきてもビクともしないだろう。
魔法障壁、物理障壁に加えて状態異常耐性や状態異常回復、呪いの完全反射など、ありとあらゆる魔法を入れた。
仮に王城が崩れたとしてもエフィを傷つけさせたりはしない。
そして安産祈願とか、無病息災とか、そういったものも全部。
言葉にするとちょっと痛いやつだと思うけど、最愛の伴侶となったエフィに渡すんだから、全力を尽くして当然だろ?
考えうる限りのリスクをカーシャと一緒に挙げていき、全てに対応したんだ。
その指輪をエフィの細く、美しい指にはめる。
エフィも俺の指に指輪をはめてくれた。
「いっぱいおまじないを込めておきました♡」
「俺もだよ」
とても心が温かくなった。
きっと考えることは一緒だろう。
そう言えば参列してくれているヴェルト教授の目に隈があるから、もしかしたらエフィは教授と一緒に考えてくれたのかもしれないな。
そう言えば、まさかと思うだろうけど、ヴェルト教授も結婚した。
同僚の男性らしい。
新国王の影がちらつく中、多くの求婚があったはずだが、よくそんな選択肢を取れたものだ。
そう思って感心したが、どうやら違うらしい。
なにせ、高位貴族で魔法研究に明るい男性が、魔法師団の研究所から学院に移り、それでヴェルト教授に求婚したらしい。
それも新たな学院長の肩書をひっさげて。
俺でもちょっと感動した。そこまで教授のことを考えているなら、俺も納得できる。
俺の許可なんていらないだろうけど。
ちなみに前の学院長は魔狼から整然と避難する生徒や教師たちを放って、我先に逃げるような人だから首で問題ない。
そして、俺がエフィに許したのと同様、学院長になった彼もヴェルト教授の研究を応援し続けると言ったらしい。
彼の実家は侯爵であり、当主は父さんと一緒に大臣をやっているから、皆で祝福した。
良かったな、教授。
そんな教授も俺たちより先に結婚したから、俺は全力でお祝いを贈ったんだ。
何をだって?
これまでこっそり隠していた魔石をたくさんな。
学院長となった彼とヴェルト教授を並んで座らせて、その目の前に魔石を1万個積み上げたら、震えていたが、感謝はしてもらえたから良かったな。
「それでは最後に誓いのキスを」
ようやくやってきた。
結婚式の一大イベントだ。
俺は勢い余らないように注意して、ゆるやかにエフィに近付き、優しくヴェールを解く。
そしてエフィを抱きしめた。
ふと見ると、エフィは薄っすらと涙を貯め、俺の方を見つめながら少しだけ顎を前に出している。
ダメだ理性が飛ぶ……。
俺はそのままキスをした。
特にハプニングなんかないぞ?
せいぜいアリアが口笛を吹いて、さすがにミトラ様に咎められていたくらいだ。
おい、王妃。ちょっとは恥じらえ。
「え~、こほん。そろそろ離れなさい」
さすがに10分もキスしていたら呆れられていた。
10年以上、ずっと義妹だと気付いていながらこれまで思い続けたんだから、10年くらいキスしたままでもいいだろ?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます