私と貴方の後追い物語~貴方を殺したのは私達で、私達を殺したのは私でした~

初心なグミ

第1話ー未成年SEX


 ベッドの軋む音と、青っぽい喘ぎ声が響く部屋。

 そこには、現在十五歳の私と十四歳の彼が居る。

 

「‪○○ちゃんっ。気持ち良いよ……///」

 

「んっ……/// 私も、だよ……♡」

 

 互いの身体を重ねる私達は、親に内緒で性行為をしている背徳感と、直に擦り合わす快楽に溺れていた。

 彼のがお腹の奥に突く度に、快感が込み上げて来て、彼にとって気持ちの良い体液を分泌していく。


 私達は行為の最中、スマホで検索したエッチなサイトの真似をしていた。

 舌を絡めながら性感帯を弄る、まるで大人の性行為。

 そんな、大人の性行為中に彼は、私のことを時折抱きしめてくれた。

 彼がギュッと抱き締めてくれると、私の心と身体は、快楽以上に安心するのだ。

 それが私は、一番好きだった。

 やがて、込み上げて来た快楽に果てた彼は、何時もはゴム越しだったそれを、直接私の中に出した。


「えへへ……/// 気持ち良かったね♡」


「そ、そうだね。う、うん……気持ち良かったよ♡ それじゃあ寝よっか? おやすみ……チュッ」


 私は生で出されたことに少々懸念しつつも、火照らせた顔ではにかみ笑う彼に絆され、気にならなくなっていた。

 そんな私は愛おしい笑みを浮かべる彼にキスすると、特に何をするでも無く、快楽という名の幸せの余韻に浸りながら、眠りについたのだった。


◆◆◆


 初めて彼と生でヤッてから約一週間後。

 吐き気や腹痛に襲われ、胸が張る感覚が合った。


「く"る"し"い"~──ーーっ!!」


 私は今トイレの中、独り蹲っている。


「‪✕‬‪✕‬助けて…………」


 彼に助けを請いながら。


◆◆◆


 初めて彼と生でヤッてから約二週間後。

 吐き気や腹痛、胸が張る感覚だけでなく、おりものがサラサラしたり、酷い腰痛に襲われるようになった。

 お腹の痛みも何時もの生理痛とは違って、若干チクチクするような痛みだ。


「私の身体、どうなってるの……」


 私は初めての経験に酷く不安になった。

 何をするでもキツイ私は学校を休むようになり、今は昼だと言うのに、こうして、ベッドの中で縮こまっている。


「‪✕‬‪✕‬会いたいよぉ…………」


 もう何日も会って無いと言うのに、彼は一向に、私の家に来る気配が無かった。


◆◆◆

 

 初めて彼と生でヤッてから約三週間後。

 妊娠検査薬の判定に、赤い縦線が入っていた。

 不安で不安で仕方無く、ママに泣いて縋ったら、産婦人科に連れて行かれたのだ。

 産婦人科での検査の結果は陽性。

 つまり私は、彼との間に出来た宝物子どもを、この身に宿らせていたのだ。

 そのときの私は、"ママになる"という事実に、心の奥が温まるような気持ちになった。

 だからこそ、私は気づけなかったのだ。

 顔面を蒼白させ、プルプルと身体を震わせている、私のママの存在に。


「ママ! 私ママになっ…………」


 私がこの喜びを、嬉々としてママに伝えた瞬間。

 バチンッ!!! という音が部屋に鳴り響いた。


「え……………………?」


 左の頬がヒリヒリと痛む。

 目の前には泣いているママが居る。

 そんなママの手は赤くなっていた。


「このっ、馬鹿娘!! 一体誰とヤッたんだ!! 今すぐ相手を教えろ!! 私がぶっ殺してやる!!!」


 痛む左の頬に手を添え、呆然とした。

 私が瞳を揺らしながらママを見ていると、ママは唇を震わせながら激昂していたのだ。


「ちょっ、ちょっと……落ち着いてください! おめでたいことなんですよ!?」


 産婦人科の先生が割って入って来て、ママを宥めようとしているが、先生の一言でママは余計に興奮した。


「何がおめでたいのよっ!? この歳で妊娠してっ、どーやって一般的な幸せを掴めるって言うのよ!!! 先生は他人事でしょうけどね!! 可愛い娘が十五歳で妊娠したのよっ!? 落ち着ける訳ないじゃない!!!」


 何時ものママは優しく、温和な人だ。

 こんなに怒り狂っている姿を、私は初めて見た。

 

 だからこそ、余計に分からないのだ。

 

 今の私は、ママと同じなんじゃないの?

 好きな人の子どもを妊娠して、産んで、彼と一緒に三人で幸せになるんじゃないの?


 そんな疑問ばかりが、脳裏を過ぎっていく。

 何も喋らず何も答えない私に、先生とイザコザを起こしていたママが、胸倉を掴んできた。


「相手は誰っ!? 早く言いなさい!!」


 物凄い剣幕で私に怒鳴りつけるママが怖い。

 私の大好きなママが、私の味方だと思っていたママが、まるで私の敵のように感じた。

 このまま彼の名前を言ってしまえば、彼はきっと、ママに酷いことをされる。

 そう思ったから、私は口を固く結んで、その目をギュッと瞑った。

 私の手が、私の足が、私の唇が、私の瞳が、プルプルと震えて止まらない。


「黙ってないで言いなさい!! ○○がママに泣いて縋るくらいに苦しんで居たのに、一回も顔を出さないようなクズ野郎は……ママが、殺してやるんだから!!!」


 私の胸倉を掴んでいた手が離されると、啜り泣くような声と共に、嗚咽が聞こえて来る。

 その正体が知りたくて、私が瞑っていた目を開けた。


「……………………マ、ママ?」

 

 私の視界には、弱々しく椅子に座りながら、両手で顔を覆って泣いている、ママの姿が映ったのだ。

 そんなママは、掠れた声で呟く。

 

「こんな子に、育てたつもり無いのに…………」


 この言葉を聞いたとき、私の心の中で、何かが崩壊する音がした。

 大きな闇が蠢いた、──心。

 ぽっかりと空いた、──心。

 真っ二つに割れた、──心。

 そんな、出来損ないの心になった瞬間私は、心ともなく彼の名前を口にしていた。


◆◆◆


 あの日から私は、学校を休んでいた。

 それもそのはずだ。

 私のお腹が、大きくなっているのだから。


 結局私は、この子を産むことにした。

 理由は単純で、大好きな彼との間に出来た、確かな愛の形だからだ。

 お腹を触ったとき、自分の子どもを感じることで、彼の存在も同時に感じる。

 それがとても、心地よかった。


◆◆◆


 あの日から約四十週経った頃、私は出産した。

 出産するときは凄く痛くて、泣いて、付き添いのママに手を握って貰っていた。

 私のお腹から子どもが生まれた瞬間、小さな口で、精一杯の産声を上げる。


「ホンギャア~ホンギャア~」


 羊水と血に汚れた子どもを洗って貰って、その小さな身体を抱いたとき。

 本当に久しぶりに、私は嬉しくて泣いた。

 私の子どもが、私と彼の子どもが、こんなに元気に生まれてきてくれたのだ。

 そう思っただけで、私の苦悩の全てが報われるような、そんな、温かい気持ちになった。

 ──私達二人で、幸せにするからね。

 でもあの日から私は、彼と一回も会っていなかった。

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