第15話 治療
俺は急ぎロープをもって船に飛び乗り、ボートを船につなげ、梯子を下ろして助けてきた女性たちを船上に上げた。
普通ここで、乗船許可を出さないといけないのだが、いちいちそんな面倒ごとなど当然すっ飛ばす。
流石鍛えている騎士たちが多くいたので、俺が手を貸さなくとも負傷者も一緒に船に連れてきてくれた。
俺はそのまま負傷者を担いでいる騎士も一緒に治療室に連れて行った。
治療ベッドに負傷者をのせ、治療のために負傷者をベルトで固定をする。
固定作業をしているときにちょっとばかり騒ぎが起こる。
俺が何をするのかわからないのか、ざわめきだしたのだ。
後でよくよく考えればわかることだったのだが、今の俺には余裕もないので、作業を進めていると、今にも俺にとびかからんとするように見えた。
ヤバイ!
危うく激高した騎士に襲われそうになるのだが、ミーシャが姫を連れて俺の後を追ってくれていたので、その騎士は姫に制止され、事なきを得た。
その場が少し落ち着くと俺にも余裕が生まれ、俺のこれから行う治療について説明しながら治療を始める。
患部がよく見えるように体を固定した後、傷の消毒のために激痛が走ることがあるが、今騒がれても面倒なので、これくらいの治療ではまず使わないモルヒネを使って、沈痛させた後に、生理食塩水で傷口を洗い流し、その後これでもかというくらいの消毒液を傷口に流す。
これを麻酔などせずにしたら激痛のためにかなりの騒ぎになっただろう。
一応暴れないようにベルトで固定はしてあるのだが、先ほどの二の前はごめんだ。
それに麻酔なんか俺は知らない。
ここ治療室にはそれこそ本格的な外科手術もできりだけのものはそろっているから、麻酔薬も部分麻酔から全身麻酔までそろっているとこの船に配属された時に船医に聞いたことがある。
知らないのをいちいち調べても時間がかかることもあり、俺の応急セットも封を切ったこともあるので、携帯させられているモルヒネを使わせてもらった。
簡単な鎮痛用なので、少量しか無いがこの際はこれで十分だ。
治療も傷口の消毒も終えたし、それ以外に大きな損傷も見られなかったので、この後数針縫えば終わりなののだが、俺にはそこまでの知識も技量もない。
幸いなことにそういう兵士のためのお助けキットもここにはあるのだ。
手術でも使用されることのある接着剤を使う。
この女性騎士はシミターのような刃渡りのある刃物で一筋切られていたので、傷口も一直線だ。
消毒後に接着剤を使い皮膚をつなぎ合わせてその上にテープでカバーした後に念のため体を回し込むように包帯を巻いで治療は終わり。
どれくらいの出血があったのかわからないので、一応常備してある点滴を使い、ついでに化膿止めの抗生物質も点滴液に放り込んでおく。
この治療で本当にいのかわからないが、死ぬことは無いだろう。
モルヒネによる鎮痛効果のおかげか、負傷した女性は寝ている。
麻酔をした訳でもないので、疲れが出たのだろう。
そうなるとミーシャを助けた時と同じようなものか、だとすると数時間は起きてこないが、幸い今は人手がある。
彼女の世話はお仲間たちに任せようと思い、ミーシャの方を見る。
そういえば、今ここにいるのは助けた人全員ではないが、それでも結構な人口密度になっており、しかも俺を含めて全員がずぶ濡れの状態だ。
風をを引いてもつまらないし、何より少し臭う。
ミーシャの時にはすぐに全部を脱がして長らくシャワーをかけていたので、臭いもそれ程でもなかったのだが、残りの人のにおいはちょっときつい。
この時代の常識はわからないが、この船にいる間は俺の常識に従ってもらおう。
船の中では船長が王様だ……俺は船長では無かったがこの船は俺が貰ったものだから、船長のようなものだろう。
ミーシャと姫、それにもう一人の従者の女性を連れてシャワー室に向かった。
いきなり騎士だと暴れられても俺一人では制御できないし、だからと言って一人ずつでは時間がかかりすぎるし、何より組織で動いているようなのだから、こういう時には頭を押さえるのがセオリーだ。
姫一人だと騎士を含む周りが騒ぎそうだったので、俺に事を信じて動いてくれているミーシャと、明らかに騎士よりも戦闘力が低そうな従者を連れていく。
姫の他二人も一緒だと不満はあるようだが妥協できる最低限のようで、残りはその場で待機してもらうことを納得してもらった。
「すみません。
皆様が海賊船であまり良い待遇を受けていなかったようで、病気になる危険性があります。
皆様の慣習にはそぐわないかもしれませんが、この船にいる間は私の言葉に従ってください。
これからのことはたとえ貴族や王族であって例外なく指示に従ってください。
よろしいでしょうか」
するとミーシャの代わりに姫様という女性が答えてくれた。
「助けていただき大変感謝いたします。
助けてもらった者たちの代表になりますフラン・ネザートと申します。
既に私の国は存在が危ぶまれますので、今更貴族がどうとか王族がどうとか申しません。
大魔導士様の指示に従います。
なんなりと申してください」
「あ、すみません。
挨拶が遅れましてというよりも、後程改めて挨拶をしますので、今は私の指示に従ってください」
「わかりました」
「では、皆様の体を清潔に保ちたいと考えております。
それに海に落ちたことで冷えた体も温かくしたいので、正直女性に対してこういうことを言うのは申し訳ありませんが、ここで着ている濡れた服をすべて脱いでください」
「「「へ??」」」
流石に、騎士が一人もいないので、大騒ぎにはならなかったが、それでも驚いている。
ミーシャもはじめは驚いたようだが、最初の助けられた時のことを思い出いだしたのだろう、すぐに落ち着いた。
「はい、この先のありますシャワーを使って体をきれいにしてまいりますが、使い方を知らないでしょうから私が実際に皆様に対して実演しながら説明をします。
出来ましたら、その後は甲板で待っている騎士たちにも使い方を説明してもらえると大変助かりますが」
「わかりました。
ミーシャはこれを使えるのですか」
「いえ、姫様。
私にも使われたようなのですがあいにく私は気を失っておりましたので知りません」
「わかりました、では、魔導士様の指示に従い服を脱ぎますわよ」
姫様は思い切りが大変よろしい。
率先して服を脱ぎだした。
姫に続きミーシャ、それにもう一人の従者も服を脱いで全裸になる。
皆スタイルがずば抜けている。
でも、垢まみれなのか、どうしても魅力的には見えない。
当然、これではおかずとして抜けるとは思わない。
しかしここまで汚れていると一回の洗浄では済まないだろう。
これは、ちょっと手間かもしれないな。
俺は覚悟を決めて、シャワー室の扉を開けて、中に入りすぐに温水を出した。
「「え!」」
「すごい!」
三人は固まってしまった。
「すみません、この中に一人ずつ入っていただけますか」
俺の言葉を聞いて、今度も姫からシャワーブースに入っていく。
「あ、暖かくて気持ちがいいですね」
「ええ、この船にはここシャワー室しかありませんが、そのうち風呂のある船を見つけられればもっと気持ち良いことがあります。
ですが、まずはこれの使い方をマスターしてください。
まずは温水で十分体を温めてください。
私は体を洗う準備をします」
俺はそう言ってから海綿で作られたスポンジを三人分見つけてきた。
それにたっぷりとボディーソープを付け泡立てる。
それをもって姫の体をそのスポンジで優しく洗い始めた。
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