第3話 もはや定番?の転生
『ヤバイ!』
俺は船から放り出されることになる。
俺が船から放り出される場面を誰にも見られてはいないだろうが、流石に横からの大波だ。
すぐに艦長は乗員の点呼を取ることだろうし、しばらくすれば俺も救助されると高を括るが、どんどん意識が遠のく。
あれ、ひょっとして、これは本格的にやばいかも
……
……
……
俺はいつの間にか知らない所にいる。
果たして生きているのか、それともこれがあの世なのか。
そんなことを考えていると、俺の心に直接訴えてくるものがある。
目の前には何もない、いや、まぶしいばかりの光だけだ。
その光が俺に訴えてくるのか。
これは、いよいよ死んだかな。
「ある意味、君の考えは正しい。
君は地球と言ったか、アースだったか忘れたが、そこの神より私が賭けで勝ち取った魂だ」
勝ち取った??
「あれ、君聞いていないのかな。
賭けで私が勝ったのに、君のところの管理者はいつまでたっても賭けの報酬をよこさないから、文句言ったら前の時の様にしたら良いと言われたが。
あ、そういえば前の彼も聞いていなかったかな。
でも、君は件の管理者でない別の者からの紹介だったので、前のようにはなるまい。
そう聞いていたので、てっきり今回は聞いているものと思ったのだが」
「神……さま?」
「ああ、そう思ってもらって構わないよ。
私はここでは創造神と呼ばれている」
「創造神様ですか……」
「もっとも君のいた星の神では無いが」
「それで私になにを……」
「前の時にも話したけれど、君の星で流行っている転生というやつだ。
少し前に勇者として一人召喚してけどね。
その彼が言ってたね。
日本という場所では大流行で、あこがれる人が沢山いるからと。
それで召喚したのだが、その彼がこちらに召喚後に色々とやらかしてね。
まあ、当初の目的は果たしてくれたからいいけど。
で、もう一度賭けに勝ったこともあって、今度は文化というの、平和的に星を発展させてほしいんだけれど……あ、君には選択肢はないよ」
「え、え、あの……」
「話を続けるね」
そこから延々と星の説明をされたけど、結構酷い。
戦国時代を星全体に広げたような状況だとかで、弱肉強食の世界と言えばよいのか。
そこで俺に勇者にでもなれとばかり思ったのだが、それも違う。
『この世界に平和を』って、なんだよそれって。
俺にどうしろと説明を聞こうとしても、俺の質問には一切答えてくれない。
ひょっとして話を聞かない系なのか?
まあ、『カミサマ』って名乗ってる段階から傍若無人、唯我独尊的なものだとは思ったけど、これはちょっと酷い。
何も知らなければ俺は何もできずにまた死ぬことになりそうだって、俺って地球ではあの時の波で死んだのかな……
「それで君にも神の祝福をって、前に召還した彼が言っていたけれどもね~。
その彼が色々とやらかしているから、君には祝福っていう彼はスキルとも言っていたけどそういうのはあげられないよ」
「え、何もない状態で私に何を望んでいます?」
「さすがに、何も渡さないのもね~」
「……」
「だから君には船をあげようかと思う。
前の勇者にも船をあげたのだけれども結局あいつは一度も使わなかったよ、酷いと思わない。
彼が望んだのに、私だって苦労して複製したのに」
「複製?」
「ああ、君たちのいる世界から直接物は持ってこれないからな。
そこの管理者がうるさいにもあるけど、神力的にも結構きつくてね」
この『カミサマ』は今管理者って言ったよ地球の神様のことを。
「で、船の複製って?」
「彼の乗っていた船ね、彼は豪華客船とか言っていたけれど、それをそのままよこせって要求してきたから、生き物は無理だけれどそれ以外を完璧に複製して送ったのだけれど、結局見つけてくれなかったよ。
酷いと思わない。
あれほど苦労して複製したのに」
「は~」
「それでね、君にもお船を渡すけど……、この船小さいね」
「は~、そうですね。
豪華客船と比べられればそうなりますね」
「そうだね~、この船だとちょっと彼との差がありすぎるから……そうだ。
近くを走る一番大きな船を複製するから探してみてね」
「探すのですか?」
「ああ、前に送った彼にもそう言ったのだけど、結局探すこともなく、使わなかったから、君は絶対に探してみてね。
あ、そうそう、前の彼のために送った船も見つければ使っていいよ。
それがいい。
君にはこれから複製する船と、彼のために送った彼の船をあげるから使ってね」
「それは勇者様のでは」
「ああ、だがその彼も船を見つける前に寿命を迎えているから大丈夫。
誰からも文句は出ないから」
「探せばいいのですね」
「そう、その船たちを使って使命を果たしてね」
だからその使命が分からないんだけど、いくら聞いても答えてくれないしどうしよう……
「これから君を私の世界に送るね……、あ、一応確認しておくけれど、君は泳げるか?」
泳げるかって聞いたけどどういうことかな
「少し、そうですね池程度ならばどうにか、しかし、海の真ん中では絶対に無理ですからね」
この『カミサマ』なら平気で人を大洋のど真ん中にでも落としかねない。
ここは誰が聞いても勘違いしないようにきちんと説明しなければ、本当に命が無くなる。
一度死んだ身とはいえ、自覚もないが転生草々に死んだとあればこの『カミサマ』のことだ。
どんな難癖を言ってくるのか分かったものでもない。
「そうなのか。
困ったね。
これから君を案内する場所は大洋の真ん中ってことはないが、今の君の話ではちょっと無理そうだね……そうだね、なら君が今まで乗っていたこの小さな船も複製するからこの船と一緒に送るから」
そういうとすぐに目の前が暗くなった。
あの『カミサマ』は本当に最後まで話を聞かなかった。
あ、でも身一つで落とされるのだけは防がれたのかな。
……
……
……
気が付くと俺は一人先ほどまで訓練をしていた船の後部デッキに寝かされていた。
さっきまでのことは夢だったのだろうか。
船は横須賀に向かって航行しているはずだ……多分。
しかし、俺の周りには誰もいない。
いや、今の時間では後部デッキに人などいないのが当たり前なのだが、『生き物以外』という言葉が頭をよぎる。
俺は慌てて船内に入り艦橋に向かう。
航行中ならば、いや、停泊中だって艦橋には誰かしらいなければいけない。
そう、俺は不安に駆られて、絶対に人のいるところを目指したのだ。
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