第4話
目を覚ましたとき、僕は知らない部屋にいた。そこは質素な部屋で周りには医療用の器具がたくさんあったので病院とわかるのに時間はあまりかからなかった。
ゆっくりと体を起こすと、痛みが全身に走った。周囲を見渡すと、窓の外は夜で、部屋の中では静寂が漂っていた。
「おはよう、ろんくん。」
そこに立っていたのは、この間夜に公園で会った伍だった。
「...伍?なぜここに?」
「まあ、いろいろと事情があってね。その話はあとでゆっくりしよう。」
「葵は…どうなった?」
あの時のことが頭に鮮明に蘇る。葵を守れなかった自分への苛立ちが胸を締めつけた。
「悪いが知らないんだ。俺は現場にいなかったから。」
「そうか...わかった。今葵がどこにいるかはわかる?」
「わからない。そして彼女が連れ去られた理由もよくわからない。」
「そうか....。」
「なあ、神について教えてくれないか?いまだによくわかっていないんだ。」
「ああ、わかった。だが、絶対に他人にいうなよ?」
「ああ、約束する。」
「わかった。まず、この世界には五人の神がいて、彼らはそれぞれ異なる能力を持っている。最強の零をはじめ、壱、弐、参、肆、伍がいるんだ。ここまではいいか?」
僕はうなずく。
「神と人間はある契約を交わしているんだ。それは、神は人間の世界の秩序を守り、人間に危害を加えない。その代わりに人間は神がこの世界で暮らすことを認めるというものだ。普通の人と同じようにね。つまり、僕たち神がこの世界にいてもなんの不思議もないってことだ。」
「なるほどな」
「でも、この契約に強く反発していた神が1人だけいてね。それが参だったんだ。だから今回のもそれが関係しているのかもしれない。」
僕は伍が言っていることに唖然としてしまった。そのためだけに葵を連れ去ったなら...僕は彼女を許さない。
その後、しばらく彼と話すと、彼は帰っていった。
「ああ、早く葵に会いたいな..」
僕はひとりでにそう呟いた。
病室の窓からは、星が瞬く紫色の夜空が見えていた。外の風はひんやりとしており、時折、カーテンが揺れていた。そんな中、僕の怒りの感情は止まりを見せなかった。
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