恋する僕らのハッピーエンド予報
ろん11号
第1話
静かな夜、星々がきらきらと瞬く空を見上げながら、僕は一人、賑やかな街を歩いていた。明るい街灯が照らす道を進むと、周りには人々の楽しそうな笑い声が響いている。ただ、その温かな音も、僕の耳には届かない。そこはまるで別の世界の出来事のようだった。
「恋」とは何だろうか。
僕はその答えを知らない。いや、昔は知っていたのかもしれないが、今となってはもうわからない。しかし、それが与える力、そしてその存在感は想像を絶する。
街の中で笑い合っている人々を見つめると、どこか遠い過去の記憶が蘇る。
僕の心の奥にぽっかりと空洞が開き、温もりが遠ざかっていく気がした。
「本当になんなんだったんだろうな、恋っていうのは。」
僕は小さく呟く。
その言葉は僕の胸の奥でこだまし、心の奥深いところにまで静かな波紋を広げる。様々な気持ちが絡み合うことで生まれる特別な何か。それが今、僕から消え去っているのかもしれない。
僕は一人で電波塔のてっぺんに立っていた。
冬の冷たく乾燥した風が僕の体を強く突き刺した。まるで次の行動を促すかのように。
*
冬の夜の公園で、僕はひとりベンチに座り、物思いにふけっていた。
勉学、人間関係、将来、恋愛...
この世界で高校生が生きるのは本当に大変だ。
それでも、こうしてひとり物思いにふけっていると、そうした苦労を一時的に忘れられる。
しかし、そんな静かな時間は長くは続かなかった。
何か違和感がある。あまりにも静かすぎるのだ。普段と変わらない景色のはずなのに、異様なほどの静けさが広がっていた。風もなければ、虫の鳴き声すら聞こえない。それが、かえって何かの前触れのように感じられて不安でならない。
普通、夜が静かなのは当たり前だが、ここまでの静かさはただの静寂ではなさそうに思えた。
20分ほど待ってみても何も無かったので僕は帰る準備をし始めた。ここにいつまでもいても仕方がない。
しかし、公園の出口に向かうと半透明の壁が立ちはだかっていて、外に出られなかった。手で触ってみるとつるつるしていたがかなり頑丈そうだった。
周りを見渡しても誰もいない。それなのに、何者かの気配がして、僕を見ているように感じた。
「...誰だ?」
僕がそう言うと数秒後、草むらからそいつは出てきた。
「こんばんは。ろんくん。」
明るいブラウン色の髪に、黄色の瞳、純白のシャツと黒のズボンを着たそいつは、人間とは思えないような不思議な雰囲気をまとっていた。
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