恋する僕らのハッピーエンド予報

ろん11号

第1話

 静かな夜、星々がきらきらと瞬く空を見上げながら、僕は一人、賑やかな街を歩いていた。明るい街灯が照らす道を進むと、周りには人々の楽しそうな笑い声が響いている。ただ、その温かな音も、僕の耳には届かない。そこはまるで別の世界の出来事のようだった。


「恋」とは何だろうか。


 僕はその答えを知らない。いや、昔は知っていたのかもしれないが、今となってはもうわからない。しかし、それが与える力、そしてその存在感は想像を絶する。


 街の中で笑い合っている人々を見つめると、どこか遠い過去の記憶が蘇る。

 僕の心の奥にぽっかりと空洞が開き、温もりが遠ざかっていく気がした。


「本当になんなんだったんだろうな、恋っていうのは。」


 僕は小さく呟く。


 その言葉は僕の胸の奥でこだまし、心の奥深いところにまで静かな波紋を広げる。様々な気持ちが絡み合うことで生まれる特別な何か。それが今、僕から消え去っているのかもしれない。


 僕は一人で電波塔のてっぺんに立っていた。

 冬の冷たく乾燥した風が僕の体を強く突き刺した。まるで次の行動を促すかのように。



 冬の夜の公園で、僕はひとりベンチに座り、物思いにふけっていた。


 勉学、人間関係、将来、恋愛...

 この世界で高校生が生きるのは本当に大変だ。


 それでも、こうしてひとり物思いにふけっていると、そうした苦労を一時的に忘れられる。


 しかし、そんな静かな時間は長くは続かなかった。


 何か違和感がある。あまりにも静かすぎるのだ。普段と変わらない景色のはずなのに、異様なほどの静けさが広がっていた。風もなければ、虫の鳴き声すら聞こえない。それが、かえって何かの前触れのように感じられて不安でならない。

 普通、夜が静かなのは当たり前だが、ここまでの静かさはただの静寂ではなさそうに思えた。


 20分ほど待ってみても何も無かったので僕は帰る準備をし始めた。ここにいつまでもいても仕方がない。

 しかし、公園の出口に向かうと半透明の壁が立ちはだかっていて、外に出られなかった。手で触ってみるとつるつるしていたがかなり頑丈そうだった。

 周りを見渡しても誰もいない。それなのに、何者かの気配がして、僕を見ているように感じた。


「...誰だ?」


 僕がそう言うと数秒後、草むらからそいつは出てきた。


「こんばんは。ろんくん。」


 明るいブラウン色の髪に、黄色の瞳、純白のシャツと黒のズボンを着たそいつは、人間とは思えないような不思議な雰囲気をまとっていた。

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