第12話 カエデとの出会い



 「ハア、ハア、本当に助かりました。 ありがとうございます。」


 「どういたしまして。 足の方は大丈夫か? もしよければポーションなら持っているが。」


 「いただいてもいいですか? ポーションを使い果たしてしまいまして。 代金は、地上に戻ってからでも大丈夫ですか?」


 「ああ、大丈夫だよ。それに、俺達も地上に戻るところだったんだ。」


 「俺? 達?」


 女性は、とてもきれいな女の姿をした大和の1人称が「俺」ということと、他に誰もいないように見えるのに、「達」と言っていることに違和感を感じた。



 「ああ、今は女だったな・・・。もう一人仲間がいるんだ。 ルーシー!もう出てきてもいいぞ!」


 「ーーーーーーーー!」


 大和が呼びかけると、岩陰からルーシーがこっちに走り寄ってきた。



 「わー!かわいい! ルーシーちゃんっていうんですか? きれいな金髪ですね。外国人なのかな・・・って、耳が長くないですか!?」


 「ああ、エルフという種族らしい。」


 「らしいって・・・。 !? そういえば、あなたもきれいな銀髪だなと思ってたら、耳が長いじゃないですか!?」


 「ああ、ダークエルフという種族らしい。ちなみに俺の名前は大和だ。」


 「あっ、名乗り遅れました。 探索者のカエデです。 ソロで活動しています。」


 「ソロ探索者か。珍しいな。 実は、俺もルーシーと出会うまでは、ソロ探索者だったんだ。」


 「そうなんですか。って、俺っ娘ダークエルフって違和感ありますね・・・。」


 「ああ、実は俺、元男なんだ。」


 「へー。男だったんですか。・・・って!? おとこーーーー!?」


 「ああ、話すと長くなるんだが・・・」



 「「「グーーーーーー!」」」


 そのとき、3人のお腹の音が鳴り、気まずい雰囲気になった。



 「そうだ、ちょうど食糧があるんだ。食事でもしながら話そうじゃないか。」


 「そ、そうですね。お言葉に甘えさせていただきます・・・。」



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 そうして、大和はルーシーとの出会いや自分が元々男であったことを話し、カエデは地上に帰ろうとしていたところで赤鬼に不意打ちを食らったことなどを話した。



 「なるほど、この話は、あまり他の人にしない方がいいかもしれませんね。 それにしても、大和さんは地底人だったんですね。」


 「地底人? なんだ、その呼び方は?」


 「あっ、すみません。 現行のダンジョンカード発行以前から、ダンジョンで数年生活潜りっぱなしだった人が、地上に出てきたときにちょっとしたニュースになりまして、その人たちをネット上では地底人って呼んだりしてたんですよ。」


 「えっ!? もしかして、このダンジョン組合カードってもう使えないのか?」


 「うーん、あまり詳しくはないんですけど、元地底人の方が、今でも高ランク探索者として活動しているので、何とかなるとは思います。」


 「そうか。しかし、顔写真は当時の俺のままだからな~。」


 「あっ。それと、大和さん。そんなに綺麗なんですから、私の方が似合うと思います。」


 「私かー。慣れないが、確かに違和感があるかもしれないな。」


 刀を取り出し、側面の鏡状の部分で自分の顔を確認しながら、「俺、私、俺、私・・・・。」と繰り返しながらそう言った。



 「まあ、男でも私って言うからな。 よし、出来るだけ私呼びでやっていこう。」


 「はい! その方が可愛いです!」


 「かわいいだって? なんだか変な気分になるな。」


 「あっ。かわいいだけじゃなくて、カッコいいよくもあるので、カッコかわいいですね。」


 「カッコいいなら大丈夫か。 そういえば、赤鬼のドロップアイテムの鑑定を忘れていたな。」


 クイッ


 大和は、いつものように鑑定眼鏡をかけて、ひょうたんの形をしたアイテムをじーっと眺めた。



 「眼鏡も似合いますね~。」


 カエデがこちらを見ながら、そういった。


 「これは、1つの魔法を吸収して、保存しておけるアイテムらしい。おそらく、相手の攻撃魔法からの防御と、それを放出して攻撃するといった感じの使い方じゃないかな。」


 「おおっ、なかなか便利そうなアイテムじゃないですか。」


 「しかし、俺がもらってもいいのか?」


 「大和さん、俺じゃなくて私です。それと、助けていただいたので、それは大和さんが使ってください。」


 「わ、分かった。私が使わせてもらおう。」


 「はい、お願いします! それにしても、ルーシーちゃんは可愛いね~、ほれほれ!」


 そう言いながら、カエデは自分の膝に乗せたルーシーを撫でていた。


 ルーシーは、諦めたような顔でされるがままの状態だった。


 「俺が言うのもなんだが、ルーシーはもともと大人で・・・。」


 「わ・た・しですよ、大和さん。」


 「そ、そうだったな。 私だ。」



 (ん? そういえば、視界の端の数字がどんどん増えているな? まあ、いいか。)



 

 そうやって、3人は地上に向けて進む前に、しばらく体を休めるのであった。



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