朝チュン許す神、許さぬ神
ちゅんちゅんちゅん。
真新しい障子紙を透して、朝の陽が室内を照らし出します。
柔らかな布団の中、まだ顔に幼さを残す少女は眩しさに眉をしかめながらも満ち足りた気持ちで、隣に眠る夫へと手を伸ばしました。
その手が逆に掴まれます。思ったよりも柔らかな手がぐいと自分を引き寄せたと思うと次の瞬間、紅珠は愛する夫の胸の中に抱かれて抱かれていました。
自分が相手を求めるのと同じように、相手も自分を求めてくれる幸福感。
豊満な夫の胸に、紅珠は甘えるように頬をうずめ
「ああん兵太郎。朝からそんな大胆な」
「ってお前かーい!」
紅珠のハリセンが、紅珠と同じように寝ぼけていた藤葛をしたたかに打ち据えました。
***
「はあ、朝っぱらからひどい目にあった」
「こっちのセリフですわ」
どつきあいではっきりと目を覚ました紅珠と藤葛はお互いに毒づきながら服の乱れを直します。
「兵太郎はもう起きているようじゃな」
「そうですわね。本当に何事もなく朝になりましたわね」
二人ともぐっすりと寝られたようですが、それとは別に何やら思うところもあるようです。
しかしこのお話は全年齢対応ですので、布団ですることと言えば寝ることかプロレスごっこくらいなのでした。
「のう藤。ぶっちゃけ年齢制限無しだとどこまで許されるんじゃ?」
「どうでしょう。世界情勢的にもいろいろ厳しいようですから」
「何とかならんもんかの。こう、花とか蕾とかおしべとかめしべとか、いい感じに表してじゃな」
「レディコミじゃないんですから。ベッドシーンは流石に無理じゃないですかね」
「お風呂とかはどうじゃ? 背中の流しっこは健全じゃろ? こう、泡とか洗面器で上手く隠してじゃな」
「少年誌のお色気漫画じゃないんですから。そもそも健全じゃろ、って聞く時点で健全ではないのでは」
「んじゃプールはどうなんじゃ? 下心があるわけじゃないけど水着からの自然な流れで致し方なくラッキースケベじゃ」
「スケベって言っちゃってるじゃないですか。ラノベじゃないんですから」
「いやラノベじゃろ?」
「そうでした。しかし自主規制というのは難しいものですね」
「ふむ。想像でしゃべってても埒が明かんな。今後のこともあるしちょいと調べてみるか。妖狐神通、スマートフォン」
神通力によって紅珠の鏡が輝きだし、インターネットにアクセスしました。紅珠は土地神クラスの妖怪ですからネットへのアクセスとか余裕です。こんな山の中でもすいすいアクセスできます。
「ええと、某小説投稿サイト、年齢制限……っと……」
「では私も。
藤葛も変化法で作り出した最新型のノートパソコンで投稿サイトの情報を検索を始めました。家に化けることも可能な藤葛ですからノートパソコンとか余裕です。漫画喫茶並みの通信速度です。
「#某小説投稿サイト、描写、制限……っと……」
二人は代表的な小説投稿サイトの公式ページや、なんとかというSNSなどを駆使して一生懸命情報を集めました。
「むう。朝チュンでも駄目なケースもあるようじゃ」
「なかなか厳しいですわね。キスでアウトという例も出てます」
「なんじゃとっ? ちゅーも駄目なのか?」
「ほらここ。キス描写で削除されたって」
「いやありえんて。ちゅーじゃぞ? ちゅーはええじゃろ。 エロじゃないじゃろ。なんで規制対象なんじゃ」
「私にキレないでくださいまし。少し前の話のようではありますし、問題なしとされるケースもあるようですけど」
「なるほど。しかしこっちが駄目でこっちがOKの基準がわからん」
「確かに」
「いやほんとにわからん。もうコレ通報されるかされないかの運しだいじゃろ」
「まあ運営としては通報があれば対処せざるを得ないでしょうし」
「いっそ通報されないように神にでも祈っとくしかないかの」
「しないよりはましかもしれませんね。とりあえず祈っておきましょうか」
二人は目を閉じ、胸の前で手を組むと神様に向かって静かにお祈りを捧げました。
「通報しないでね」
「通報しないでね」
二人の真摯な祈りは、きっと神様にも届いたことでしょう。
「よしこれで安心じゃ。さて行くか。お前様―、おはようございますのちゅーですじゃー」
「ちょっ、安心と決まったわけでは、お待ちなさい!させませんよ二重の意味で!」
******
あとがき
この物語はフィクションです。実際の人物、団体、小説投稿サイトなどとは一切関係がありません。
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