幕間 王国某所

「くそっ!!失敗しただと!?」


王国某所。

ブタ政治家は吠える。


「は・・・はい。帝国の闘技場にて夜の瞬きチェイスアロウは恩赦を獲得!炎の歪カールベルト氏は重傷で現在治療中。


あ、あと、王宮魔導士長より説明を求められています・・・!」


「あんの若作りジジイが!


ほっとけ!!今はそれどころじゃない」。

まずい、まずいぞ・・・!

王国と帝国は、対魔族ということで共同戦線を張っている・・・!!

そんな中、私欲で相手の特記戦力である武貴に手を出したなんて知られたら俺は・・・!!!


「とにかく!至急、戦場に刺客を送りこめ!ダークタウンのほかの連中に依頼してもかまわん!!」


「し、しかし!」

「ふぅ。必要ない」


影から伸びるカギ爪。

飛ぶ、ブタ政治家の首。


「ひっ!?」

腰を抜かす文官。影から出てくる獣人。


「ふー。こんばんは。私は夜の重みのベールアロウ。妹が世話になった」


黒の、身長180cm、だがデカすぎず、引き締まるところは引き締まった屈強な獣人が話しかける。


「ひ・・・ひっ!!ぼ、ぼくはただの、文官です・・・!い、命だけは・・・!!」

間違いない。英雄級だ。逆立ちしても勝てっこない・・・!!


「ふぅ。別に君に興味はない。仕事をしくじったのは妹のミスだとしても、口封じはよくない。だから制裁しただけ。それに何より・・・


怖い人が見ている」


「ふふふ。さすがですね」

突如、現れる青年。その姿を見て文官は叫ぶ。


「王宮魔導士長・・・!!いつから!?」


「若作りじじい!のあたりからだよ。・・・それはともかくお嬢さん、こんばんは。良い夜だね。月見にはぴったりだ。」


「ふー。え、外、思いっきり曇ってるけど」


「それはそれで乙なものだよ」


「ふぅ、そういうことにしておく。・・・さっきも言ったけど、そこの文官に興味はない。帰っていい?」


「おぉ、構わんよ。お嬢さんがやらねば、わしが首と足で団子結びをしてやるところだった。手間が省けた礼を言いたいぐらいだ。」


「そ。助かる。アナタとやりあうのは、骨が折れそう。ふー。」


場の空気が弛緩する。

どうやらここで、英雄級の激突するような事態にはならなそうだ。


「話ついでにお嬢さん、もし都合があるならワシの非正規の依頼を受けてみてくれんか?・・・察するに、妹君である夜の瞬きチェイスアロウ嬢の様子を見に行ったりするのではないかね?」


「ふぅ、あの子はまだ未熟。確かに心配で見に行くつもりがあった。・・・それが?」


「うむ。戦場に行くついでに帝国辺境都市カローパットによって、ちょっとした偵察任務をお願いしたいのじゃよ。


内容は来訪者の件、と言えばわかるかの?」


「ふぅ。わかる。でも、あくまで偵察まで。占星術師たちが騒いでいる件だとしたら、私には手に負えない。」


「・・・LV90を超えるお嬢さんでも、かの?」


「ふーう。隠しているみたいだけど、LV100のあなたであっても。私は英雄と呼ばれる身だけど、それだけで伝説に勝てるとは思っていない」


再び、張り詰める空気。

だがそれを破るものがいた。


「あ、あの・・・!その件なのですが」


「なんじゃ?」

「なに?」


「は、はい。実は帝国外交官から連絡で・・・!魔神と帝王の拳が一時交戦!!しかし、魔神と一定の条件が満たされない限りは【一切の人類に害を与えない】停戦契約を締結、帝国と王国、両国の代表者と面談を求めているということです!」


「ほぉ」

「へぇ」


それは、偉業。

かつての魔神戦争を事前に食い止めたということにならない。未来までは、まだわからないが。


「・・・で、あれば急ぐことはないかもしれんの。お嬢さん、本当に道すがらでよい。もし魔神を遠目に見ることがあれば、様子の共有報告をもらえんか」


「ふぅ、了解。現状で交戦リスクはほぼ0。情報は共有する」


「頼むぞ」


影に消える、姿。

ほっと息を吐く文官。


「・・・行きましたね。寿命が縮んだ気分です」


「・・・そうじゃの」


ダークタウンの猛者、夜の重みのベールアロウ LV90オーバー。

世界にはまだ見ぬ強者が潜んでいる。


魔神の出現。

契約者である来訪者。

未来は、まだ誰にもわからない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

マネースクワッド ~剣と魔法の世界で、お金の力で生きていく~ BFP @butterfly20200403

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ