007.戦争魔術師の考察

「さぁて、この戦場はどぉなるかね」

俺はフォグ。まぁ一般的な、攻撃魔法とポーション補助で戦う魔導士、その中でも魔術師というオーソドックスな区分に分類される傭兵だ。

ま、薬学もかじっちゃいるがね。相手が高レベルな場合はもっぱらポーションでサポートってわけだ。


戦場・・・とはいえ、状況は膠着状態。

人間も魔族も正規兵は疲弊状態、残ったのは雇わればかり。


主義や信条で突っ込んでくる奴もいるが、「金をもらってケガするのは馬鹿馬鹿しい」という暗黙の了解で、傭兵同士の戦闘もおおむね小康状態だ。


正規兵のレベルがアベレージ30。傭兵は23前後。

しごく【真っ当】で、【逸脱者】の存在しない、一般的な戦場だ。最も魔王軍の正規兵は数が少ない分、LV50を超えていやがるが。


「とはいえ、このまま終わるとも思えねぇんだよなぁ・・・」


戦争は水物だ。

何がどう転ぶのかわかったもんじゃない。


「ん。フォグ」


「おっと、占星術師の嬢ちゃんか。なんだ?」

占星術師・エルフ・ミラ。星の流れを基に占いを行い、星の位置で位相より召喚を行い、戦う。俺とは系統が違う魔導士だ。


「・・・星が堕ちた動きを感知した。


「なんだと?」

来訪者。

転生者、ワールドワーカー、遠くより来るもの。呼び方はいろいろとあるが、要は世界の「異分子」だ。来訪するやつによってはちんけな戦場どころか、文字通り【世界が揺れる】。


「しかも、近く。この戦場の南20km。帝国辺境都市カローパット」


「・・・おいおいおい、まじかよ。場合によっては脱兎で逃げないとやべぇぞ」


「そう。そうなる可能性も含めての相談」

こりゃ、仲間の戦力分析なんて悠長なことをいってる場合じゃねぇな。来訪するやつによっては、チームを組んで撤退戦だ。


「ミラ嬢ちゃんよ。ほかに分かったことは?」


「ん。・・・来訪者自体は、問題ない。レベル1推定の人間。だけど・・・」


「だけど?」


「レベルが計測不能、種族どころか人族か、魔族かもわからないものがついている」


「最悪だクソ。場合によってはかよ」


魔神戦争。

文字通り、「魔をなす」「神」が来訪した戦い。


人族と魔族が共闘し、「神」を打ち滅ぼした、英雄・バケモノたちの戦場。

レベル50を超える逸脱者がかなわない英雄級が、文字通りゴミのように散っていった【災害】


それが起こる可能性がある。


「ミラ嬢ちゃん、話は分かった。俺のほうで、いざって時は脱出の手配を整える。嬢ちゃんも、なにか続報があれば教えてくんな」


「・・・ん。」


思えばこの日が、俺の運命の分かれ道だったのかもしれねぇ。

いや、運命というのは間違いか。俺が選び、そして今の結果がある。


この世界には遥かなる英雄/バケモノたちがいる。

まだまだ知らない、未知がある。


勇者と、魔王。


王国が抱える特記戦力、騎士衛兵隊と王宮魔導士。

帝国の武装貴族、8柱武貴。

魔王軍の12種族王


冒険者ギルドのSランク冒険者たち。

魔術師ギルドが抱える神祖返りの魔法使いたち。

そして裏社会の連中が抱える暗殺ギルドとダークタウンの傭兵たち。


どいつもこいつも一騎当千、最低レベルが「逸脱者」という異常。

こんな魔境に付き合っていたら、俺の命はいくつあっても足りねぇ。


・・・この時は、そう思っていたんだ。

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