【復刻版】黄昏の図書室 〜記憶のかけら〜

芝樹 享

プロローグ


 黄昏時。俺は『黄昏の図書室』と呼ばれる場所に向かった。学園敷地内、本校舎の北東に位置するとされる場所は、普段教職員も滅多に行く場所ではない。噂では、今の学園寮の建つ前の旧学園寮があったという。だが、その噂も真意かどうかわからない。


 学園寮を出て、裏の林の奥を目指した。茜色から薄紫へと移りゆく空が、木々の間から差し込む光を陰らせ、辺りに不気味な静寂が漂い始めた。


 草木の一角に薄暗くも蔦に絡まる壁が続いている。崩れかけた階段にびっしりと雑草が覆われ、普段から足を踏み入れない場所だということは一目瞭然だった。

 俺はごくりと生唾を飲み込み、一歩一歩足元を確かめ階段をおりた。

 夕日の影で、闇が俺を飲み込んでいく。


『地下第二図書室』


 錆びれたプレートを見た俺は、拳をにぎりしめ決心した。


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