第2話

 喫茶店にやって来たかの女性は三日に一度くらいは来店するようになりました。


 今日は、友人の女性と一緒にやって来たのですが。ちなみに、後で二人の名前を教えてもらいまして。ショートカットの方が神野かみのさん、友人の方は天野さんと言うそうです。神野さんは打ち解けてくると、なかなかに明るく茶目っ気がある女性でした。天野さんも穏やかながらに温和でわたくしの年齢が分かると、色々と話しかけてくれます。


「マスター、最近ね。近くに新しいカフェができたそうよ」


「あら、そうなんですか。わたくし、あまり外には出ないので。今、初めて知りました」


「へえ、マスターはここに住んで長いでしょう?」


「はい、確かにこの町に住んでもう、十七年は経ちますけど」


「そうなんだ」


 ぽつぽつと話していたら、天野さんがにっこりと笑います。


「マスターは喋り方が丁寧ですね、私達も見習いたいぐらいだわ」


「はあ、いつの間にかこんな喋り方になりまして。若い頃は普通だったんですよ」


「意外ですね、マスターのお若い頃かあ。想像できないです」


 天野さんはそう言って、ころころと笑いました。


「じゃあ、マスター。ホットミルクティーとブラウニーのセットを1つ!」


「私はホットレモンティーと梨のタルトを1つお願いします」


「はい、分かりました。ホットミルクティーとホットレモンティー、ブラウニーと梨のタルトですね。少々、お待ちください」


 わたくしは頷いて、カウンターの裏側にて準備を始めます。まず、神野さんのミルクティーを用意しました。棚に行き、銀色に「Tea」とラベルが貼られた缶を取り、蓋を開けます。茶漉しも取ったら、一旦台に置きました。ポットに水を入れ、ガスを着火します。

 そうしている間に、朝方に焼いておいたブラウニーを冷蔵庫から出しました。軽くオーブントースターで温めて出してきたお皿に盛り付けます。粉砂糖をふりかけ、ミントの葉っぱを飾り用に置きました。

 また、生クリームを泡立ててホイップクリームにします。それをブラウニーのお皿にデコレーションしました。

 シュウシュウとポットのお湯が沸きます。火を止めたら、カップにお湯だけ注いで。しばらく置いたら、捨てます。

 茶漉しに入った茶葉をカップにセッティングして、お湯を注ぎました。半分だけ入れたら、蓋をします。普段よりは長めに蒸らしますね。

 1分半くらいでしょうか。濃いめにしたら、手早くお鍋で温めたミルク、お砂糖を加えます。これで神野さんの分は出来上がりね。

 次に、天野さんの分を用意します。冷蔵庫から、レモンを出したら。ナイフで輪切りにします。2個くらいを切り分けたら、カップに先程と同じくお湯を注ぎましてね。

 しばらくしたら、捨てます。茶漉しにあった茶葉は処理したら、別の茶漉しや新しい茶葉を用意しました。

 また、茶漉しなどをセッティングしてお湯を再度注ぎます。蓋をしたら、冷蔵庫から朝方に作り置きしていた梨のタルトを出しました。

 2人分のフォークやタルトにホイップクリームをデコレーションしたりとテキパキと動きます。1分くらいしたら、蓋や茶漉しを取りました。レモン汁を絞り、残った輪切りレモンをカップの端に置きます。

 さ、2人分が出来上がりました。


「……お待たせしました、まずは。ホットミルクティーとブラウニーですね」


「ありがとう、マスター」


「そして、ホットレモンティーと梨のタルトです」


「ありがとうございます」


「では、ごゆっくりどうぞ」


 笑顔で言って、後片付けなどをしました。神野さんや天野さんは話に花を咲かせます。

 2人の喋る声が店内に響くのでした。

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