学生卒業からレールへと向かう

モトミヤ ヒロ

学生卒業からレールへと向かう


 就職先が決まった。多くの企業が内定式を終え、周囲が内定先を語り合う10月中旬、そんな時期にして初めての内定だった。


「ほんとですか!ありがとうございます!!」

最終選考後の電話での連絡、よほどに察しが悪くない限り、良し悪しどちらの連絡であるかは予想できる。選考結果を聞き、用意していた言葉を吐く私。求めに求めた結果であるはずなのに、どうにも心は満たされない。この言葉には、意義も謝意も込められていなかった。


別に働きたくないわけではない。

大人になれば、働かなければならない。

国民の義務だから、働かなければならない。

そんなことは知っている。理解しているはずだ。


これから約40年間、社会を形成するひとりとして働いている姿を想像する。どんな人と出会い、どんな仕事をしているだろう、絶望するような人生ではないが、今想像している人生は果たして私の心を満たし尽くしてくれるだろうか。



ああ羨ましい、自己を表現して「自分」という存在に価値を生み出している人たちが。私には「それ」ができる努力も才能も備わっていないのかもしれない。その結果が現状なんだろう。そう思っている。


今は、先のことを考えるのはよしておこう。

考えないことで、想像できない人生だと錯覚させておくとしよう。

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学生卒業からレールへと向かう モトミヤ ヒロ @kosumo55

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