ストレス
死人に口なし
第1話 まだ樹海の一角にもならない
耳耳 頭は自殺しに樹海に来ていた
持つ物と言えばスマホと財布と発煙筒だけだ
電話は解約しており、財布もここに来るためだけに切符を買うために持ってきただけで
もう小銭しか入っていない
発煙筒は使用期限があと12年ある新品だ
未練を感じ取れないほどに木の根と土を踏み
木の枝と幹を掴み進み続ける
もう樹海を突っ切って何処かの街に出てしまうのではないかと歩き続ける
そこは自殺の名所で首吊から不審死まで
まるで死因の博覧会だ、もはや美しいと感じる
10歩進めば一人、15歩進めば零人
20歩進めば三人、1歩進めば七人
奥に進めば進むほど死体は増えていき
湿気た植物の匂いよりも腐った肉の匂いが
多く香るようになってきたその時
樹海の中に近づいてきたせいか
まるで戦争の一つや二つあったかの様に
死体の山ができている、耳耳は
恐怖を感じ取れないほどに死体と肉を踏み
首吊ロープとそれにぶら下がった物を掴み
進み続ける
『もう夕日も落ち、月が昇ってくる時間になり
そ死んだ死体の死んだ目が月に照らされ
こちらを見てくる、目にハイライトが宿り
生きているように感じ、身体を踏み抜くのに
少しの罪悪感を感じるがどうせ後々自分も死体になり、また来る自分と同じ人間に踏まれると考えると心に一体感が湧いて出てくる、この樹界に
上も下も無い美しい現状だけだ、言い訳もなく
皆、死が直前にある、それだけになった
死ぬ直前に思いが変わろうと
誰かに無理矢理連れてこられたとしても
きっとこの場所のエンドロールには死しか無い
どれだけ奥に行こうと…』
『この樹海は謎の原理でコーンベルトなんかより
数倍大きく、入り組んでいる
だが一つだけ大きな特徴がある、そう、死体だ
樹海の中心に行けば行くほど死体の量が増える
それも規則的に、ここからここは何%
そこからあそこは何%と増えていく
本当の真ん中まで調査はまだされていないので
本当は分からないが、どこかの学者が発見された死体の数から計算すると、この樹海にある死体の人数は約34京1200億人になると言われる
耳耳 頭はその最奥、中心に行こうとしている
研究や調査の為ではなく、自殺の為に』
真夜中になっても耳耳 頭は進み続ける
樹海の中、月の光が不気味に道を照らす
死体の山をさっきから登って、歩いて、降りて
を繰り返しながら進んでいると急に死体の量が
ドッと増えた、さっきまでとは桁が違う、年代も変わってきた気がする、さっきまでの死体は腐っていたが、今の死体は所々骨が見え、ミミズのおかげか、完全な土になっている所もある
踏むと「ぐしゃ…つぃゃり…」と崩れ、筋繊維の音が聞こえ、腐肉を踏んでいると言うより
コンポスターの中身を踏んでいるような感覚だ
匂いも樹海らしい湿気た葉の匂いが戻ってきた
この調子でいければ、一ヶ月も経たずに中心に
たどり着けるだろう
進行度11%
続く
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