土着信仰クローズドサークル vs パリピ千人
沖田ねてる
プロローグ「ギンギラギンに輝いています」
事実は小説よりも奇なりとか言った奴、ちょっとここで土下座するです。
所詮、小説は作者一人、あるいは編集者や共著者がいたとしても、二、三人程度で考えるもの。数多の人間がそれぞれの思惑でもって動いている事実の怪奇さには敵わない、といった哀愁的なことも含まれている言葉なのかもしれません。
が。
「飲めや歌えや、祭りだ祭だァァァッ!」
「「「FOOOOOOOOOOッ!」」」
大学屈指のパーティーピーポー(※略称パリピ)の彼が煽り、連れて来た千人が声を上げ、神社の境内で行われていた筈の地元の夏祭りが野外フェスと化したこの状況を見て、同じ言葉が吐けるですか。
少なくとも、わたしは吐けません。
境内に無断駐車したキッチンカーのビールサーバーから生ビールを飲みに飲み、いい気になった無数のパリピ共が、あちらこちらでやりたい放題しています。
まずは神社のシンボルともいえる、大鳥居の付近です。暗がりに佇む姿が邪悪な巨人に見えていた筈のそれは、真下にぶら下げられたミラーボールの所為でギンギラギンに輝いています。
「イエーイ、ノってるかーいッ!?」
近くではトレーラーの荷台では何処ぞのDJが機材を操作し、最近流行りのJ-POPのダンスミュージックバージョンを流していました。
「おいおっさん、何キョトンとしてんだよ。んなシケた太鼓なんざ捨てて踊れや踊れッ!」
「えっ、あの、ちょっと」
先ほどまで地元の民謡、
既に眩暈がしそうなんですが、手を清める為の手水舎に目をやってみれば、更に酷い光景がありました。
「み、水おえええええええぇぇぇ」
「ちょっと何やってんのよアンタらーァッ!?」
飲み過ぎたらしい一部のパリピが、水場で盛大な嘔吐の真っ最中です。知り合いのキヨおばさんが悲鳴を上げていました。
手水舎でゲロ吐く飲んだくれとか、字面も絵面も最悪です。首から上を水中に突っ込んだままの動かなくなってる奴もいるんですが、おい、あれ大丈夫なんですか。
彼らだけではなく、他の村民らもパリピに絡まれていました。飲まされたり、踊らされたり、連れ込まれたり。
一部は抵抗しているみたいですが、千人のパリピに対して村民はわずか百人程度、多勢に無勢です。
「な、ななな、なんなんだこれはァァァッ!?」
各所で大惨事が繰り広げられる中、ようやく正気に戻ったらしいこの村の村長、脂ぎった中年こと
はい、わたしも、全く同じ気持ちです。ウェディングドレス姿で立てられた丸太に括り付けられてる自分なんか、どうでもよくなりそうなくらいです。
「どういうことだハルアキ君、儂はこんなもん聞いておらんぞぉッ!?」
「えっ、言いましたよ?」
顔を真っ赤にし、般若のような形相になったホウロクに対して、大学屈指のパリピことこの騒動の張本人、
「村を盛り上げるって、オレ言ったじゃないですか」
パリピはわたしの方を見ると、持ち前の赤い瞳でウインクしてくれやがりました。
「ねっ、お魚ちゃん」
「ま、まさかカナカちゃんがこれを……?」
「さもわたしが主導したみてーな口ぶりしてんじゃねーですよ、ってかわたしをその呼び方で呼ぶな、こんのパリピぃぃぃっ!」
ホウロクに要らぬ誤解を与えそうな口ぶりをしてくれやがったパリピを、わたしはキッと睨みつけます。彼は笑っているばかりで、全然効いている手ごたえがありませんです、ぐぬぬ。
一体全体、どうしてこうなってしまったのでしょう。思い返してみれば、何か、何か原因が分かる筈です。
わたしはパリピを睨みつけながら、今日のこの時に至るまでのことを思い返していました。
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