第28話 過ちの結末◆公爵子息ルーカス視点

 俺は、とにかく事態を収拾しないといけないと思った。レイクウッド家の当主と、ヴィオラに頭を下げて、謝罪の言葉を述べる。謝罪は、受け取ってもらえなかった。


 仕方ない。リリアンを連れて、早くその場を離れる。まだ文句を言っている彼女を連れて、会場から離れる。


 その間、ずっと俺は慌てていた。どうしよう。どうすればいいのか。そんな考えが何度も繰り返していた。


 屋敷に戻り、リリアンを部屋に閉じ込める。それから俺は、父に報告しに行く。気が重いが、黙っているわけにはいかない。


「大変なことになってしまいました。申し訳ありません」


 目を離してしまった隙に、リリアンが接触してしまったこと。禁止していたのに、彼女が破ってしまった。それを俺は止められなかったこと。すべてを正直に話した。


 説明を終えると、父は深刻な表情で問いかけてくる。


「何かあったら責任を取ると言っていたな。どうするつもりだ?」

「……そ、それは」


 俺は言葉に詰まってしまう。確かに、責任を取ると言った。もしもの時のことを、俺は全く想定していなかった。ただ、彼女が問題を起こさないようにすることだけを考えていた。


 だから、どうするのか聞かれても答えられない。


「どうするか、こちらで決める。お前は、彼女と一緒に大人しくしていろ」

「は、はい」


 そう答えるしかなかった。答えを出せず、俺は部屋を出るように言われた。もう、何も出来ない。




 あれから数日が経ち、俺達の処遇が決まったらしい。父から呼び出されて、それを聞かされる。


「各所から抗議が来ている。当然、レイクウッド家からも」


 レイクウッド家の当主が言っていた通り、本当に抗議したらしい。仕方ない。彼には、それをする権利がある。


「ローゼンバーグ家と相談し、お前とリリアン嬢の二人を辺境へ送ることに決めた」

「なっ!? そんな……」


 父が俺を辺境へ送ることを決めた。リリアンの父親も、辺境へ送ることを了承しているなんて。予想外の言葉に、思わず声が上がる。


「跡継ぎはどうするのですか? ヴァレンタイン家には今、俺の他に候補はいないはずでは!?」

「養子を取る。既に準備は進めている」

「なっ……」


 養子を取る。そんな事までするのか。その言葉で、すべてを悟った。


 リリアンの行動を自由にしていいと許可してくれたのも、こうなることを予期していたから。そして案の定、彼女は問題を起こしてしまった。俺が油断したばかりに。


 あの時、俺は絶対にリリアンの行動を止めるべきだった。いまさら後悔しても、もう遅い。


 どうして、こんなことになってしまったのか。


 ヴィオラからリリアンに乗り換えたこと。リリアンを野放しにしてしまったこと。そして、最後の引き金を引いてしまったこと。


 すべては俺の責任。この罪は、一生かけて償わねばなるまい。


 辺境へ行くことが確定した。俺はもう、逃れられない。受け入れるしかない。


 最後に俺は、父と契約を交わすことになった。これも拒否することは出来なかった。


 それからすぐ、俺はリリアンと共に辺境へ旅立った。

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