第17話 嫌悪と疑念◆妹リリアン視点

「最悪だったわ! あんなお粗末なパーティー、今まで経験したことがない!」


 パーティーが終わって、ルーカス様と一緒に部屋へ戻ってきた私は怒りを露わにしながら、訴えかけた。


 入念に指示した準備はどれも間違っていたし、私のこだわりは完全に無視されていた。あんなの、私が時間をかけて考えた完璧な計画とは全然違うのよ。


「装飾も雑で、センスのかけらもなかったわ。それに、料理の出来も最悪。味付けが濃すぎたり、冷めていたりで、ゲストに失礼だったわよね」


 パーティーの最中も、失敗ばかりが目についた。メイドたちの態度も悪くて、挨拶にも影響が出ていたのよ。これで、私の悪い評判が広まってしまったら完全にメイドたちのせい。


 私は次から次へと溢れ出てくる不満をぶちまけた。自分の感情を抑えることなんてできない。それぐらい、今回の失敗は不愉快だった。絶対に成功させないと駄目な、大事なお披露目だったのに。


「ねえ、ルーカス様。どうしてメイドたちは私の邪魔をするのかしら?」

「いや、どうだろう……」


 そう言いながら私は、こんな考えに至った。もしかして、お姉様を慕っていた奴らなのかも。代わりに婚約した私のことを認めないって、そう言うつもりね。お姉様は昔から、妙に使用人たちから好かれたりすることが多かったし。


「すまない、リリアン。僕の確認不足が原因だ」

「ルーカス様のせいじゃないわ! 全部、あのメイドたちのせいよ!」


 そうよ、悪いのは奴らなの。私を落ち着かせようと必死になるルーカス様にも、少しイライラしてしまうけれど、彼に当たるのは止めておく。まだ冷静な部分で、私は判断していた。彼に嫌われるのは避けないとね。


 とにかく、今の私がするべきことは。


「あんな奴ら、全員クビにして。二度と私の前に姿を現さないようにさせてよ」

「……わかった。父に言っておくよ」


 パーティーを失敗させた奴ら、そして姉の影響が残っているかもしれないメイドたちを全員追い出すべき。屋敷に残していたら、この先も妨害してくる可能性がある。その可能性は潰しておかないと、私は安心できないわ。


 ルーカス様は渋々といった様子で了承してくれたけれど、彼の目には戸惑いの色が浮かんでいた。メイドたちを解雇することに、躊躇いを感じているのかもしれない。


 だけど、仕方ないのよ。私の望みを叶えるためには、邪魔者は排除するしかないのだから。私のお願いを聞いてもらいましょう。新しい婚約相手に選んでくれたらんだから、これぐらいしてもらわないと。


 でも、本当に最悪なパーティーだった。ある意味お姉様に邪魔されたようなもの。この責任を、どうにかしてお姉様に追求できないかしら。

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