Eternal presen〜君と俺と使い魔と〜

@Shioo

第0話 プロローグ

皆、口を揃えて言う。「このお人好し」と。

 自覚がないわけではない。

 たとえば、どんな授業でも、何か提出するとなれば誰かが俺を推薦し、先生もそれを承諾して俺に頼む。俺は流されるままに「はい、分かりました」と一つ返事でクラス全員の提出物を両手に持って職員室へ向かう、こと。

 たとえば、購買で何か買ってこいと言われ「うん、分かった」と言って、戦場と化した購買へ向かい、ボロボロになりながら戦利品を渡せば、好みじゃないと跳ね返され自分のお弁当を盗られ、俺はその少ない戦利品を食べる、こと。

 たとえば、明らかに困ってないだろう。さっき「金欠で遊べない、ちょー退屈。あ、緑川にお金もらえばいいか」という言葉が聞こえたのに、「電車賃がなくて帰れないの。貸してくれない?」と言われてお金を貸す、こと。

 他にもあるけれど、これらが「お人好し」と言われる原因になっていることは分かっているだけ、普通のお人好しよりはマシではないだろうか。いや、きっとバカなのだろう。分かっていて、やることをバカなことだ。これが「お人好し」というのだろうか。

 仕方がない。生まれ持った性格を今更治せと言われても、簡単に治せないし、こんな自分を気に入っている部分もあるのだ。

 だから、これでいい。他の人より損はするかもしれないが、これでいいのだ。

 


――そう思っていたのに。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る