第25話 注目を吸い込む闇 上
フハハハハハ。
我が邪眼に魅入られし哀れなる人間よ。
己の数奇な運命を呪うが良い。
オー。オー。
光の軍勢幾千、幾万をすくみあがらせる我が足音を聞け。
我が牙、我が爪、我がトサカ、その全てに恐怖するがよい人間よ。
オー。オー。
我こそは闇なり。闇こそは我なり。
光の呪縛幾億年から解放されし我が混沌の悲鳴を聞け。
その声の前において万物はその常識を失い、制御を失い、感情をも奪い去るだろう。
オー。オー。
我こそは暗黒なり。
影よりも黒く、
夜よりも黒く、
ウスターソースよりも黒い。
「ママ、おはよー」
「おはよー」
フハハハハよくきたな恐れ知らずの幼子よ!
さあ、我が暗黒の立ち姿に狂気せよ!!
「パパは?」
「トイレじゃありませんか?」
「えー、麻由もトイレ行きたい」
「じゃあ、『早く出て』って。あの人トイレ入ると長いですから」
これは傑作也!我の姿に恐怖し、見てみぬふりをするとは!!
人は見たい現実しか見ず、受け入れたい現実しか許容できぬのだ!
フハハハハハ!!
「ねーパパ!! 麻由トイレ使いたい!」
「はいー。すぐ出ますから。もうちょっと待ってくださいねー」
「遅いんだよいつもパパは!」
「すんません」
これはこれは傑作也!そして実に滑稽なり!!
いくら見えてないふりを続けようとも、
我の出現によって
其方たちの日常は哀れ砕け散ったのだ!
さあ狂気せよ狂乱せよ!
我こそは漆黒の闇なり!!
「お待たせ」
「遅いー! もう漏れるー!!」
「はいはいすいませんすいません……」
「宏明さんコーヒーでいいですか?」
「あ……お願いします。牛乳入れていただいていいですか……?ちょっとお腹の調子が……」
我等漆黒の末裔は、貴様たち人間の愚かさ、欲深さを見てきた。
そして人間が一番恐れるものも熟知しているのだ。それこそ闇だ!
人間は闇を恐れる! さあ存分に恐れよ! 抜け出せない暗闇を!
「お腹出して寝てるからですよ」
「うん……寒いのに、なんか布団被ると暑くなっちゃうんだよね。
まああとはーストレスもあるのかなー」
「自覚できてるストレスなんて、ストレスの内に入りませんよ」
「……はい」
……そろそろ我に関心を持ったらどうだ?人間よ。
我はずっとここにおるのだぞ!
けしからん!闇の王を蔑ろにするとは!!
「パパ、トイレが汚かった」
「え、あ、ごめん」
「ちゃんと掃除してよ! 汚したなら!」
「はいはい……すいません」
おーい!!
闇だよー!!
漆黒の闇さっきからずっとここにいるよー!
なんか気まずくなってきたよー!!
「麻由、ちゃんと手を洗いなさい」
「はーい」
「宏明さんもですよ。しかもお腹緩いのでしたら念入りに手を洗ってください」
「はーい……」
なぜだ!?見えてないのか闇が!?
暗すぎた?!
暗すぎて逆に見えないパターン!?
「うるさいなあ!」
お……おう……
聞こえておるのではないか!我は漆黒の……
「聞こえてますよ! 聞こえてて無視してるんです!」
無視だと!?
なんて恐れ多いことをするのだ愚かな人間よ!!
「ウチはね! あんたみたいなのは一旦無視するんですよ! もーうんざりなんです怪異は!」
な?!……貴様は馬鹿か!?盲目か!?
我をなんだと心得る!我こそは漆黒の……イテ!
「ジャマジャン。通路塞ぐなジャン。どくジャン」
フハハハハ。猫とは。
これはちょうど良い。
手始めに貴様から暗黒の渦に……
え……でか!!
猫、でか!!!
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