side煌牙

昴にあの危険な男を任せて、俺は小鳥遊蓮のマンションの付近へ移動した。


そこには通報者がいて、詳しく話を聞き残っていた匂いを確認して辿り着いた答えは最悪なものだった。


攫われたのは小鳥で間違いない。

微かにハニーブラッドと小鳥の香りが残っている。

本当に、最悪中の最悪だ。


小鳥は誰に攫われた?


そもそも、小鳥遊蓮の部下は一体何をしてるんだ。


小鳥が部屋の外から出ないようにボディガードを付けてたんじゃないのか?


それともボディガードが殺されていて小鳥が外に連れ出されたのか…?


何にしてもボディガードの意味を分かっていない。


ボディガードに話を聞きたいが、赤の他人が誘拐だと判断し通報までしてる時点で相当強引に連れ去られているはず。


ただの人間ならともかく、小鳥はハニーブラッド。最悪な結果になってもおかしくはない。


それを考えると感じたことのない焦りや恐怖が押し寄せて来そうになる。

その度に自分に言い聞かせた。


今は俺が冷静に事を対処しないといけない、俺が取り乱したり冷静さを欠けば確実に手遅れになる。


何とか平静を保っているとポケットに入っているスマホが何度か鳴る。


何か情報が出たのかもしれない、そう思った俺はすぐにスマホを取り出し画面を確認した。

俺に電話をかけてきたのは昴だ。

昴の時点で嫌な予感がする、まさかもうバレたのか?


「どうした。」


電話に出てすぐそう聞くと、昴は一言簡単に告げた。


「バレました。」


だろうな、そうだろうと思った。


「そうか、命があるならいい。よく小鳥遊蓮にキレられなかったな。」


「俺よりもキレてる対象がいたんで無事で済みました。」


昴意外に?だったら答えは簡単だな。


「ボディーガードか?」

「はい、話を聞いた後殺すからそこから一歩も動くな。って言って消えました。」


ボディガードが生きてるって事は、小鳥が自発的に外に出た可能性が高いな。


「小鳥遊蓮がボディガード詰めてる間に俺も隊長と合流するんで位置情報送ってくれると助かります。」


ボディーガードは確実に殺されるだろうな。


まぁいい、そこまで助ける義理はない。


「分かった、まだ匂いが残ってるからある程度辿れたら送る。

そっちも何か分かれば教えてくれ。」


「はい、じゃあ後で。」


互いに通話を終了して俺は小鳥の血の匂いに集中した。


まだ微かに残っているこの匂いでどこまで辿れるか……。


小鳥、どうか無事でいてくれ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る