feel soft
dede
28
私を揺するのは誰よ? まだ眠たいのに。
「おーい。そろそろ起きろよ?」
「ん……むーありがとう。起きるわ」
「おはよ、リノ」
「んー? んーおはよぅシュン……」
私はそう答えると布団の中で寝返りを打ち枕に顔を
「……」
溜息が聞こえたかと思うと布団がもぞもぞ動く気配がする。
気になって薄目を開けた私の、鼻先が触れそうな位置にシュンの意地悪な笑顔があった。
「じゃ、リノ? おはようのキス、しよっか?」
「ヒィッ!?」
そうして私は目が覚めた。とても心臓に悪い目覚めだった。朝から心拍1.2倍とか明らかに体への負荷が強すぎる。
「あの起こし方は、ないったらない」
「リノが起きないからだろ?」
私が未だに寝起きの件について不平をタラタラ零してみても、シュンはまるで悪びれなかった。
確かにその通りだし、おかげで遅刻しないで済みそうなんだけどさ。文句の一つも言いたい。
私は味噌汁をズズズと啜る。それと、お礼の一つも言っておこう。
「……シュン、朝ご飯ありがと」
「いいよ。俺は休みだし。リノこそ休出大変だな」
「滅多になかったんだけどねー?アハハハ、久しぶりにトラブってるよ」
朝の食卓に私の乾いた笑い声が流れた。
そんなシュンは湯呑に緑茶を注ぐと私の前にコトンと置いた。
「夕飯、何がいい?」
「そっちもいいの? うーん、家庭料理っぽいのがイイ」
「んー、なら生姜焼きはどう?」
「おーいいね。ごめんね、明日は休めるから。それでシュン、今日はどうするの?」
「家具探しは一緒に観たいから明日にするよ。だからそーなー、今日は荷解きと近所の探検かな」
「いーなー。一緒行きたい」
「俺もだよ。でも今日は仕事だろ?明日一緒にな」
「シュンは大丈夫なの? 新人研修とかで忙しくない?」
「まだそんなでもないよ。新入社員のうちは残業NGだし。だから今は俺の方でアレコレ引き受けるよ」
そう言ってシュンが微笑む。私に心配掛けないように微笑む。
「うーホント助かるー。愛してるー」
「はいはい。それで時間大丈夫か?」
「あ、いけない」
私は慌ててご飯と納豆をまとめてお口に掻き込むとお茶で流し込んだ。
「ただいまー」
仕事が終わってへとへとの私はようやく家に帰りつく。
返事はなかった。
代わりにショウガのイイ匂いと、シャワーの音が聞こえてくる。
……ああ、なんか、いいなぁ。
私は、まだ引っ越したばかりの私たちのマンションの部屋をゆっくり眺める。
仕事に行ってる間にだいぶ片付けてくれてたみたいだけど、私の分のダンボールはまだ幾つか手つかずのままだった。
ベランダに続く大きな窓の手前には洗濯籠が置いてあった。中身も入ってる。どうやら取り込むだけ取り込んで畳むまでは至らなかったらしい。
私はせめてもと思い、シュンがシャワーを終えるまで洗濯モノを畳もうとカゴから中身を床にバラまいた。
私の服からも彼の服からも同じ洗剤の匂いがする。そして私も彼も使うであろう、真新しいバスタオル。
シュンがお昼に干してくれたおかげだろう。ふかふかで柔らかな手触り。
それで、急に自分の中で実感が湧いてきた。
そっか。これから私、シュンと一緒に二人で住むんだ。
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