第19話

リル公爵の執事ダンテの案内で、ルークは屋敷内の厨房へと向かった。厨房には、驚いた様子の料理長と数名の料理人たちが立っていたが、ダンテが説明すると、彼らはすぐに協力体制を整え、必要な材料の用意に取り掛かった。


「料理長、パンと肉、野菜はありますか?」とルークは尋ねた。


「ええ、ありますよ。どのようなものをお作りになるおつもりでしょう?」と料理長が興味津々に答える。


「ナート領で評判のハンバーガーを再現します。パンを横半分に切り、肉を焼いて、それに野菜やソースを挟んで提供します。」とルークは手順を説明し、料理人たちに協力を仰いだ。


厨房内は次第に活気づき、肉が焼かれる香ばしい匂いが漂い始めた。料理長も、ルークの指示に従いながら、補助する。


「では、ソースはどのように?ナート領では甘酸っぱい味が人気と聞きますが…」と料理長が聞いた。


「たしかにそうですね。今回はトマトをベースにした少し甘めのソースが良いでしょう。ただし、リル公爵が初めてお試しになるので、あまり癖の強い味にはしないようにお願いします。」とルークが指示を出す。


やがて、見事に仕上がったハンバーガーが完成した。ルークは、料理長と共にリル公爵の執務室へと向かい、ハンバーガーを恭しく差し出した。


「お待たせしました、リル公爵。こちらがナート領で流行しているハンバーガーでございます。」とルークは丁寧に言った。


「おお、これが噂のハンバーガーか!」リル公爵は興味津々でハンバーガーを手に取り、一口かじった。その瞬間、彼の顔が喜びに満ちた表情に変わった。


「これは…美味しい!」とリル公爵が声を上げる。「見た目も面白いが、味も絶妙だ。肉の風味がしっかりとしていて、ソースがそれを引き立てている。」


ルークはほっと安心し、同時に自信を深めた。公爵がこのハンバーガーを気に入ってくれたことで、ナート男爵領の新たな食文化がリル公爵領に広がる可能性が見えたのだ。


「もしよろしければ、今後このハンバーガーをリル公爵領で広めていけたらと考えております。店舗を出店し、公爵領の方々にも楽しんでいただきたいです。」とルークが提案すると、リル公爵は嬉しそうに頷いた。


「いいだろう。ぜひ協力させてもらおう。リル公爵領にも新たな風を吹かせてくれたまえ。」リル公爵は微笑んで、再びハンバーガーにかぶりついた。


こうしてルークは役所の人材確保だけでなく、ハンバーガー事業の拡大というビジネスチャンスも手に入れることができた。

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