異世界不動産 ~不動産から始まる異世界改革~

Nami

第1話

のどかな田園風景が広がる。水面を風が吹き、地肌に当たるととても冷たく感じる。

僕の名前はルーク。リステリン王国ナート男爵領に住む15歳だ。父はナート男爵であるマルク・フォン・ナート。38歳。

母はサナ・フォン・ナート。36歳。

父であるマルクは身長が190cmあり、青髪のイケメンだ。そして母サナはナルビック子爵家の令嬢であり、とても美女である。

そんな二人の間に生まれた僕ルークは15歳にして身長は180cm近くあり、とてもイケメンに生まれた。これは2人に感謝しなければならない。


ルークは15歳ということもあり、少しずつ父マルクの領主としての仕事を少しずつ補佐している。本来であれば13歳になった貴族の子息や令嬢は王都の貴族学園に入り、勉学に励む。

貴族学院は2年間通う。本来今年は最終学年であり、貴族としてのマナーや領地運営など様々なことを学んでいる。しかしルークは自領で父マルクの補佐をしている。

理由はとてもシンプルである。

そう、ナート男爵家はとても貧乏なのだ。

お金を工面して通うことも目指した。しかし、領地の状況は水ものである。運悪く、貴族学園に通うひと月前にナート領を水害が襲った。

被害はかなり甚大であり、復興するのも一苦労といった状況だった。

そんな中でルークは貴族学園に通うことにとても抵抗を感じた。貴族学園に通うためのお金を復興財源に当てれば少しは役に立つと考えた。

こうしたことから、ルークは貴族学園を諦め、少しでも貴族としての知識などを身につけるため補佐に専念している。


この日、ルークはいつも通り父マルクに呼び出された。向かったのは父マルクの執務室である。


「父様、お呼びでしょうか?」


ルークはマルクに話し掛けた。


「ルーク、今日の午後はナート川の治水事業を視察してきてほしい。進捗度を今一度確かめておきたい。」


「ナート川の視察ですね。承知しました。午後1番で向かいます。」


「うむ、頼んだぞ。特に追加での予算が必要になるかどうか見極めてきてほしい。今年もかなり財政が厳しいからな…」


マルクは最後少し落ち込んだ様子で話した。


「父様、今年もやはり…」


「あぁ、何とか黒字にもっていこうとしたが…」


マルクはこのナート男爵領を少しでも黒字に持っていけるように毎年試行錯誤していた。

今年は特に農産物の他領への輸出に力を入れていた。当初は上手くいっていたが、次第に市場も反応が薄くなり軌道にのらなかった。


「父様、しっかりと見極めてきます。」


ルークは一言そういうと現地へと急いで向かった。


______________________________

ルークは屋敷を出て、馬車で10分程のナート川の工事現場に到着した。

多くの作業員が堤防の補強工事に邁進しており、進捗状況には満足した。

しばらく現場を歩いて見回っているとルークはひとつ気になる場所を見つけた。


「おや?あれは…」


ルークの見つめる先には新たに新設する水門の設置が始まるところであった。


「滅多に見れるものじゃないしもっと近くで見ようかな。」


そういうと水門近くの岩場にルークは足をかけた。しかしその瞬間、ルークは空を気づけば見上げていた。

ルークは足を滑らせ地面に頭から倒れたのだ。

ルークは頭にかなりの衝撃を受ける。


「い、痛い…」


激痛が走る。

意識が朦朧とする。今起きていることが次第に分からなくなってきた。

そんなことを感じていると同時に頭の中に突然なにかが入ってくる感覚があった。


「な、なんだこれ…」


なんとそれはルーク、いや、前世の僕の記憶。

不動産会社の営業マンとしての記憶であった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る