軌跡

祇園ナトリ

愛・愛する

◈慈しむ【2024/10/28】

 花を慈しむ姿が、好きだった。


 まるで花畑では無いのかと見紛う程の、広い広い庭。その庭園を、まさに蝶の様に舞いながら、私の名を呼ぶ愛しい人。


「見て、シルバー! うふふ、この花、シルバーそっくりよ」


 そう言って、貴女が指さしたのは真っ白なジニア。誇らしげに咲く花は白、対して似ていると言われた私は黒。一体何処がそっくりなのだろうかと首を傾げていれば、貴女は可笑しそうに笑声をこぼした。


「ふふ、きっといつか分かるわ」


 そう言って、この庭園に咲くどの花よりも美しい顔で笑った貴女の顔を、今でも鮮明に覚えている。


 今ならば分かる。確かに、真っ白なジニアは私だ。何時までも、何時までも、私は貴女を愛している。


『白いジニア――永遠に変わらない心』

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