17 ダスタウラス ②
なぜ、ザガンの配下が討伐された場所に現れるのか。
考えられる理由は一つしかない。
ザガンが復活する可能性だ。
とはいえ、一度倒された魔神が復活したという事例は他にないらしく。
可能性としては低い。
しかし、こうして魔物が複数回にわたって出現している以上、何かしら原因があるのは間違いないのだ。
そして今、まさしく私はその原因に関わるような現象を目撃した。
「魔神のマナを取り込んでいるのね」
「ま、魔神のマナを!?」
「そう、魔神のマナは他のマナとは違う特殊なマナなの」
以前、ザガンと相対した私は知っている。
他にも、魔神と戦った実力者が、複数人同じことを言及している記録が残っていた。
そもそもマナとは、大地に宿るもの。
女神様が私の魂を肉体に押し込めたところからすると、マナの出どころは女神様ではないだろうか。
彼女が大地を作った際に漏れ出した力の一旦がマナであり。
そこから生命が生まれていると考えればわかりやすい。
「特殊なマナ……というか、マナでありながらマナではないと考えるべきかも」
「ま、マナでありながら……」
「マナというのは、神から生まれ出るものなのよ」
女神のマナがそうであるように、魔神もマナを作り出すことができる。
魔神の作り出したマナは、通常の私達が扱うマナとは別種であるというわけだ。
まぁ、近しいものではあるからこうして取り込むことができるのだろうが。
「ダスタウラス、さっきとは比べ物にならないくらい早い」
「お、お嬢様……大丈夫なんですか!?」
すでにダスタウラスは動き出していた。
こちらの光線をものともせず正面から突っ込んできては、こちらがギリギリで回避している状況。
やっかいなのが、先程と違って光線が効いていないという点。
すべて正面から受けて、突破してきている。
「まあでも、威力に関しては上げればいい。森への被害がきになるけど、四の五の言っていられないし」
「そ、そうですね……お嬢様も、まだまだ本気は出していないようですし」
「当然、だってどれだけ速くなっても、固くなっても、ただ突っ込んでくるだけの相手に負けるはずがない」
と、私が口にした瞬間。
”オオオオオオオオオオオオオッ!!!”
ダスタウラスが雄叫びを上げ、その周囲に岩が出現した。
マナで形成した岩の弾丸だ。
それらが、こちらに向けて射出される。
ダスタウラスの突進を避けても、岩の弾丸で避けた先に追撃が跳んでくる。
「お、お嬢様!」
「まだ焦るほどではないけどね」
跳んできた弾丸は光線魔術で対処。
砕け散って、マナに帰った。
――その瞬間、更に大きな岩が砕けた場所で再生成されて飛んでくる。
それは聞いてないな。
光線も弾かれた。
「お嬢様!?」
「こればかりはしょうがない」
ため息を尽きながら手をかざし、直後に私達は岩に飲み込まれた。
◯
――ダスタウラスは勝ち誇っている。
岩に飲み込まれた敵の様子を見て、勝利を確信したようだ。
これではっきりした。
ダズタウラスとこちらの力の差が?
否である。
「大丈夫かな?」
「は、はい……お嬢様」
岩の中で、私は魔術によって光の壁を生み出しつつミイを守っていた。
光線は火力が低いせいで防ぎきれないけれど、別に私の魔術があいつに劣っているわけではない。
むしろ壁を生み出して受け止めたほうが、出力を気にしなくていいので楽だった。
「あの……外はどうなったのでしょう」
「ダズタウラスは知能が低い、このまま岩を砕いて突進してくればいいのに。勝ち誇って動かないの」
「で、でもこの状況だと私達も動けないのでは?」
「それこそ、問題ない」
言いながら、私の手には――光の剣。
「私がどうして、魔術師に扮したかわかる?」
「え、ええっと……魔術の扱いに長けているから、ですか?」
「残念、逆。私――周囲に被害を出さないよう遠距離で戦うのが一番苦手なの」
そう、私が魔術師を選んだのは、その戦い方が一番下手だから。
ある意味で、最も手加減している戦い方なのだ。
魔術師としてのスタイルは。
結果――
岩を切り裂き、中から私とミイが躍り出る。
完全に勝ったと思っていたダスタウラスは油断しきっていて。
こちらの行動に対応できない。
他にも、ミイが私に使ったのと同じ用に、身体強化の出力を爆発的に上げることで相手の認識をずらしている。
まあこれは一瞬だけの強化ではなく、永続して行われるマナの総量に頼ったゴリ押しだが。
「わ、わあ」
「振り落とされないように!」
突然の速度上昇は、ミイにも影響を与える。
落とさないように抱えつつ、高速の一撃がダスタウラスをうがった。
”オオオオオオッ!? オオオオオオオッ! オオオオオオオオオオオッ!!”
一撃必殺。
断末魔を上げるダスタウラスは、そのままピクリと震えてから動かなくなった。
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