北海道は陥落するか?
日本と対峙しているロシア軍の東部軍管区には、約八万人の兵力が存在すると言われています。
ウクライナの激戦で精鋭部隊を筆頭とした即応戦力が大きく減耗し、東部軍管区の所属部隊でも大きな損害出ているとはいえ、莫大な戦略予備を抱えるロシア軍は未だ健在です。
もしウクライナで失敗したロシアが、ウクライナに侵攻したのと同じような理由で、ソ連時代に失敗した北海道の制圧を目指した場合、おおむね八万ほどの部隊を投入することが可能だと考えられます。
ロシア軍はウクライナで大きな損害を出しているので、終戦後すぐ北海道に侵攻とはならないでしょうが、将来的には十分あり得ます。
北海道には自衛隊の主力である第七戦車師団、第二師団を筆頭とする数万の陸上兵力に加え、対ロシアを想定して編成された海上、航空自衛隊の部隊が駐屯しており、ロシアの侵攻に備えています。
ですが、北海道の陸上兵力だけでは、ロシア軍の主力と戦えるほどの戦力は有していません。
もし、ウクライナのように陸続きの戦場でロシアとぶつかれば、数で劣る自衛隊は苦戦するでしょう。
ですが、日本はウクライナと違いロシアと国境を接していません。
ロシアが北海道を侵略するためには、極寒のオホーツク海を越える必要があります。そして、海を越えるという軍事学上の意味は小さくありません。
基本的に上陸作戦というのは非常に難易度が高く、たとえ上陸する側が圧倒的に有利な状態で挑んだとしても、多くの犠牲を払うことが多いです。
それに、もし成功して橋頭堡を確保することに成功しても、海上を通過する補給ラインを維持するためには、潜水艦などの妨害から無防備な輸送船を守り続ける必要があります。
海を挟んだ地域で大規模な作戦を展開するのは非常に難しいのです。そんなことができるのはせいぜいアメリカ(以下略)
陸続きのウクライナですら兵站が不安定になっているロシア軍に、海を挟んだ日本で自衛隊の北部方面隊とやりあえるだけの大部隊を維持し続ける兵站能力は無いと思われます。
そもそもロシアは陸軍国家であり、海軍戦力はあまり大きくないです。
つまり、たとえロシア軍が北海道への上陸に成功したとしても、海上、航空自衛隊が健在であれば、ロシア軍は補給ラインを維持できずに瓦解すると思われます。
特に海上自衛隊が潜水艦を投入すれば、ロシアの数少ない輸送船が壊滅するのにそこまで時間はかからないでしょう。
自衛隊の戦力は、北海道に限ればロシアの北部軍管区に劣りますが、本州や沖縄の部隊を合わせればその総兵力は20万を超え、そこに在日米軍が加われば、平時ロシアにおける即応戦力とも十分に戦える規模を有しています。
よって、北海道が陥落することは、まずないと思われます。
問題は、それはあくまで自衛隊が保有する戦力のほぼ全てを北海道に投入できた場合の話だということです。
もし敵がロシア単体であれば問題ないのですが、おそらく自衛隊が有事に巻き込まれるシュチュエーションでは、先述した中露の関係から考えて、自衛隊部隊を集中運用することが難しくなっていると思われます。
中国の活動については、長くなるので次のエピソードで詳しく紹介します。
そして、もう一つの大きな問題として、自衛隊というよりは日本政府には、ある危険な理論が存在しています。
それが、主に財務省が主導で訴えている『戦車不要論』です。
これは、最近になって急激に力を持ち始めた理論で、ドローンや対戦車ミサイルにより戦車が撃破されている映像を見た人々が、戦車のことを「高価な割にすぐ破壊される兵器」と勘違いして発生した、戦車を廃止しようとする動きです。
実際のところ、いくら最新鋭の対戦車ミサイルやドローンを使用しても、防御力の高い戦車を撃破するのは容易ではなく、特に歩兵にとって、戦車は大きな脅威です。
そもそも、最近の戦車はドローンを想定した防護装備を搭載しているので、無人航空機や対戦車ミサイルによる敵戦車の撃破も難しくなりつつあります。
もちろん、戦車単体では撃破されるリスクも小さくありませんが、それはどの兵科についても言えることで、他の兵科(歩兵や防空兵)などと協力しなければ、どんな兵科でも一方的にやられる危険はあります。
戦車を失えば、自衛隊は正規軍と戦える正面火力を大きく失うことになるでしょう。
そうなれば、もしロシア軍の上陸を許した場合、陸上自衛隊に取れる選択肢が全滅覚悟の遅滞戦術か民間人を巻き込んだゲリラ戦しかなくなります。
近年急激に拡大しているこの思想が自衛隊の上層部にまで食い込んでくれば、北海道の守りが失われる可能性もあるでしょう。
戦車を失った自衛隊では『三正面作戦』どころか二正面作戦すら戦えません。
軍事費とは、すなわち外交が失敗して戦争が発生してしまった時に備えた保険です。危険が大きければ保険料が高騰するのは、仕方のないことです。
予算や政治の問題で戦力の大半を失った自衛隊が、ウクライナ戦争で現代戦を学んだロシア軍と北海道で衝突する。
そうならないことを、祈るばかりです。
台湾有事と三正面作戦については、次のエピソードで紹介しようと思います。
ここまでお付き合いいただき、ありがとうございました。
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