第七夜(Ⅵ)
捕縛されたフェリックスたちは、会場を出されることはなかった。近衛兵が横に立ち、壁沿いにずらりと並ぶ。
「護送しないのは、逆らった者の末路を知らしめるためですか、王妃陛下」
「いいえ。あなたたちも結末は知りたいでしょう? 特にジェレミー、あなたにはいい薬になるでしょうから」
ジェレミーが怪訝そうな顔をしたところでマーガレットが涙目で進み出た。
「アナ、いえ、王妃様! 確かにフェリックスたちは許されない罪を犯してしまったけれど、きっと悪気はなかったんです! ただ、アナ、じゃない、王妃様を思いやっただけだと思うの、です。ほら、王妃様は、身分が身分だから。宝座に座ってはいけない人が座っているのを、フェリックスはよくないことだと思ったんだわ。それで、国を正しく導こうとしたのよ。うん、きっとそうよ! 暗殺じゃなくて、少し痛くするつもりだったんだわ。だってフェリックスたちが人殺しなんてするわけないもの。ねえ王妃様、一度だけ、みんなを許してください。主もきっと、お許しくださいますわ!」
「突っ込みどころが多すぎて突っ込む気も失せるわね。ファロン家の新たな当主、申し訳ないけれど、少しの間ご夫人の口を塞いでいてもらえないかしら」
「これは無体を仰る。留まることを知らない風を留めよと?」
「無茶は承知しているわ。少しの間で結構よ」
「承知しました、我らが太陽」
恭しく一礼して、ウェンリーは全力でマーガレットを宥めにかかる。そこで叫んだのはスペンサー公爵夫人だ。
「訳が分からぬ! なぜ我が息子ジェレミーが罪人と呼ばれねばならぬのだ! 王家の血を引かぬ、汚れた娘を宝座から追放し、国を正しく導こうとしただけであろう! いますぐにこの縄を解け! スペンサー公爵夫人たるわらわの命令ぞ!」
「この王宮で命令することが許されているのはわたくしだけです、公爵夫人。越権行為は控えるように」
「よもやその座に座っていることが虚構だということを忘れたか! 前々から怪しいと思っていたのだ、お前はジュディスに似ておらぬ、しかも10年記録がない! 王家の教育も受けておらぬお前が、どうして先に言っていたようなことができる! なぜ皆だまされるのだ、この愚か者共が!」
「わたくしは他国で帝王教育を受けた。政策を知っていても可笑しくないでしょう」
「他国だと! どこで育ったというのだ! 紫の瞳がクレスウェル王家特有の瞳だと、どの国でも知られておろう! 大体父無し子のお前がどうやって他国の王宮にもぐりこめると言うのだ!」
「父無し子というところから過ちなのだけれど」
「宝座はわらわのものだ! そこを退け!」
「――生憎とお前にくれてやる座はないし、お前は不敬罪の筆頭だ、
涼やかな声が響いた。視線が一斉に声の主の方を向く。礼装を纏った王太后が開け放たれた扉の向こうに立っていた。
王太后の隣に立つ男の顔を見た瞬間、貴族たちは思わず息を呑んだ。
――王妃に瓜二つだったのだ。
白い肌に、深い藍色の瞳。何より、緩く束ねられた銀の髪が、王妃との血縁を証付けている。
「遠路遥々お越しくださったこと、お礼申し上げます。お母様、お父様――いえ」
王妃は顔を上げて、晴れやかに笑う。
「
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