第21話
花園様の屋敷にはメイドが戻ってきて忙しなく掃除などをしていた。暑さが目立つような季節で、小説を読んでいても気になる。
それでもコーヒーを淹れて飲んでいた。そして花園様は今日も忙しそうだ。九重は外での仕事があるらしく遠方に行っていた。
特にすることもないしとにかく暑い。何となく、屋敷をフラフラと歩く。そしてある部屋の前を通った時、すごい音がした。何かぎ割れるような音が響く。
一応、ノックをしてその部屋に入ることにした。
「……あの、大丈夫ですか?」
その光景は酷いものだった。どうやらメイドの一人がお皿を何枚か割ったらしい。
「怪我してませんか?」
「……あっいえ。大丈夫です。大変申し訳ありません」
すごい勢いで頭を下げられて驚いてしまった。でも、怪我がないなら良かったと思う。
「怪我してなくて良かったです。危ないので俺が片付けますよ」
そう言いながらガラスを拾う。正直、盛大に割ったなと思いながら適当な紙の上に拾い上げていく。
「いえ、私がいたします。私のミスですから」
そう言われても危ないのは事実だ。そう思いながら片付けていると、お皿を割ったメイドが入口を見て固まっていた。不思議に思い振り返るとそれはいた。
「……どうされました?花園様」
ジト目というか、不機嫌そうに見ていた。
「別に?それより、誰も怪我はしてない」
「はい。すいません、花園様。私が割ってしまいました」
とても申し訳なさそうにメイドが謝っていた。
「別にお皿ぐらい割っても大丈夫よ。怪我が無いのなら良かった」
そう、にこやかに言いながらガラスを拾った。俺も続けて拾う。手で拾える程度の物を回収し終える。そして、ふと疑問に思ったことを尋ねた。
「花園様。そういえば、何か用事があってここに来たんですか?」
忙しく仕事をしているし、ここの部屋と花園様の部屋はだいぶ離れている。なのでお皿が割れた音も聞こえないはずだ。
「あっそうだった。玄兎に用事があって来たの」
そう言いながら花園様が立ち上がる。やはり何か用事があってきたらしい。俺を探してここまで来たようだ。合わせて俺も立ち上がる。
「少しだけ玄兎を借りていくよ?後の片付けは頼むね」
そう言って部屋を去っていく花園様を追いかけるようにして俺も出た。
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